
中国国家安全部(MSS)がNVIDIAのジェンスン・フアンCEOを標的に情報活動を進め、同社の先端GPUに関する情報収集や中国への輸出を働きかけようとしたと報じられました。シンガポール企業Megaspeedの幹部だった女性は、MSSに直接勤務していたとされています。
Megaspeed幹部を通じた情報活動
女性はアリス・ファン、またはファン・ルーの名で知られ、少なくとも2023年までMegaspeedのマネージングディレクターとして記載されていました。情報活動は少なくとも2024年には始まっていたとされ、その年にはジェンスン・フアン氏と女性が一緒に写った写真が公開されています。
報道によると、主な目的はNVIDIAの最先端ハードウェアに関する情報を得ることでした。また、ジェンスン・フアン氏に米政府への働きかけを促し、同社の高性能GPUの一部を中国へ輸出させることも狙いに含まれていたとされています。
Megaspeedは東南アジアでデータセンターを建設し、NVIDIA製チップを使った計算能力をアリババに貸し出していると報じられました。この仕組みは、米国の輸出規制を一部回避する経路とされています。
MSSの海外情報収集を担う仕組み
2016年に米中経済安全保障調査委員会へ提出されたピーター・マティス氏の証言では、MSSは中央省庁に加え、省の国家安全部門や市・県の国家安全局から成るとされています。中央省庁と一部の省級部門は、海外で秘密工作員を使った活動を担うと説明されています。
同証言によると、中国の情報機関は外交官や駐在武官などの公的な立場を使うほか、さまざまな職業や肩書を隠れみのにして情報を集めます。ビジネス関係者が情報担当者や協力者、スパイ網を築く中心人物として使われる場合もあるとされています。
Megaspeedの幹部が情報活動に関与したという報道は、こうした活動形態と接点があります。ただし、過去の証言が説明するのは中国の情報活動全般であり、今回の個別の疑惑を裏付けるものではありません。
GPU輸出をめぐる米国の審査
米商務省産業安全保障局(BIS)は2026年1月、NVIDIA H200やAMD MI325Xなど一部のAIチップについて、中国向け輸出許可の申請を個別に審査する方針を示しました。対象チップの輸出には、一定の安全要件を満たす必要があります。
2026年1月15日発効の規則では、対象チップは総処理性能が21,000未満、総DRAM帯域幅が毎秒6,500GB未満であることなどが条件です。輸出する側には、米国内の供給を損なわないことや、製品が米国市場で販売されていることを示す認証も求められます。
中国側の購入者には顧客確認の手続きが求められ、輸出前には米国内の独立試験機関が性能を検査します。輸出先での不正利用や、規制対象の第三者による遠隔アクセスを防ぐ要件も設けられています。
輸出働きかけをめぐる応酬
ジェンスン・フアン氏は2025年、トランプ大統領に中国向けGPU輸出を認めるよう働きかけました。その後、NVIDIAの2番目に高性能なチップを数量限定で販売する合意が成立しました。報道によると、米政府は販売額の25%を受け取る取り決めを設けています。
NVIDIAの最先端GPU「Blackwell」は中国向けに販売されていません。ジェンスン・フアン氏は2025年に輸出を求めましたが、トランプ大統領は認めませんでした。2026年5月には、ジェンスン・フアン氏がBlackwellと後継製品Rubinを中国へ輸出すべきではないとの考えを示したと報じられています。
NVIDIAの広報担当者ジョン・リゾ氏は、同社は顧客と機密情報を共有せず、顧客から大統領への輸出交渉を求められることもないと述べました。中国大使館の報道官は疑惑を「根拠がない」と否定しました。アリス・ファン氏は取材に回答していません。









