A smiling student holds up a printed collectible card containing a reminder of a skill learned in class. Two other students are visible in the background.
出典: news.mit.edu

MITの授業「Hack Yourself」は、学生がデータを集めて生活習慣を試し、学習やウェルビーイング(心身の良好な状態)について考える実践型の講義です。学生は学期中に60枚を超える「Intentionカード」を集め、授業で扱った習慣や方法を振り返ります。

生活の課題をデータで考える授業

MITの電気工学・コンピューターサイエンス学科とExperimental Study Groupが共同で開講し、講師のAna Bell、Carter Jernigan、Paola Rebuscoが開発しました。機械学習やマイクロプロセッサーを扱うのではなく、コンピューターサイエンスの考え方を個人の目標に応用します。

授業では、学生が自分の生活に関する問いを設定し、調査や小規模な介入を通じて考えます。アンケートの設計、インタビュー、測定方法や偏りの検討、分析計画の作成を学びます。大規模な研究を実施するのではなく、問いを分解し、仮説を立てて検討する手順を身につける構成です。

学生の関心には、スマートフォンの使用を減らすことや、睡眠を安定させることが含まれます。上級生では仕事の進め方や生産性、職場への移行、チームワークやリーダーシップも話題になります。講師のJerniganは、すべての学生に共通する最良の介入策は見つかっていないと述べています。

カードで習慣を振り返る

Intentionカードは、研究に基づく習慣や方法を短い言葉と画像で表した、トランプほどの大きさのカードです。学生は毎週数枚を受け取り、学期末までに60枚を超えるカードを集めます。

講師らは、経験型の授業では知識を得るだけで行動が変わるとは限らないと説明しています。カードを手元に残る形にすることで、学期の後にも方法を思い出せるようにする狙いがあります。

学生はカードを冊子にまとめ、並べ替えたり、以前のカードを新しいカードと一緒に見直したりしています。Rebuscoは、こうした行動が授業で扱う「間隔を空けた反復」や想起につながっていると報告しました。これは授業内で観察された利用の様子であり、カードの効果を比較した実験の結果として紹介されたものではありません。

「望ましい未来」を書く課題と研究

授業で学生が取り組んだ課題の一つは、望ましい将来の自分を20分間具体的に想像し、その自分へ手紙を書くことです。学生のSarah Hoppは、将来に望むことを考え、恐れよりも達成したいことに意識を向ける時間になったと話しています。

この課題につながる「望ましい未来の自分(Best Possible Selves)」の活動は、Laura Kingが2001年に提案しました。活動の効果を検討した8カ月間の実験では、参加者が楽観的な考え方を練習する方法と、感謝を書き表す方法が調べられました。研究では、介入を知ったうえで自ら参加することや、継続して取り組むことが、介入群でのウェルビーイングの変化に関係しました。

この活動を扱った文献レビューは、30件を超える研究を取り上げ、学生や成人、抑うつ状態にある人など幅広い参加者を対象に、対面とオンラインの両方で実施されてきたと整理しています。レビューでは、楽観性、ポジティブ感情、健康、ウェルビーイングの向上につながる可能性が報告され、活動を繰り返すことで効果が高まる傾向も示されています。

想起と反復の間隔をめぐる研究

講師らがカードの見直しについて述べた「想起」は、学習した内容を手がかりから思い出すことです。想起練習と間隔反復の組み合わせは、研究でも検討されてきました。ただし、MITの授業で学生がカードを見直す様子と、実験室で学習効果を測る研究は、同じ条件の検証ではありません。

語句の組み合わせを覚える実験では、学習直後に近い短い時間では、間隔を徐々に延ばす想起練習が有利でした。一方、2日後のテストでは、間隔を均等にした想起練習のほうがよく記憶されました。最初の想起を少し遅らせると、反復間隔の方式にかかわらず、長期の保持が改善する結果も報告されています。

外国語の語彙を4週間学ぶ別の研究では、学習期間全体を通じた平均的な想起成績は、間隔を広げる方法のほうが高くなりました。一方、学習終了から8週間後の最終テストでは、間隔を広げる方法と均等にする方法の成績は同程度でした。