連邦政府の基準づくりが遅れ、地域規制が広がる
米国では連邦政府による自動運転車の安全基準づくりが停滞するなか、市や州が道路上の運行や緊急時の対応に独自のルールを設けています。ロボタクシーの展開地域が増えるにつれて規制も細分化し、事業者は地域ごとの要件への対応を迫られています。
自動運転車の安全基準や車両の設計・性能は、連邦政府の道路交通安全局(NHTSA)が担う領域です。NHTSAが2016年に示した連邦自動運転車政策は、メーカーなどに設計、開発、試験の指針を示す初期枠組みで、法的拘束力のある規則ではなく、行政ガイダンスとして公表されました。
一方、道路上の運行、交通管理、緊急対応には州や自治体の権限が関わります。2017年のSELF DRIVE Act案は、車両の設計・製造・性能に関する州や自治体の規制を連邦基準に合わせる一方、登録、免許、保険、交通管理などの地域権限を残す内容でした。法案の条文では、州が連邦基準と同一の基準を執行することも認めています。
市や州が運行条件を個別に定める
市は一般に車両の製造基準を決める権限を持たない一方、道路の使い方を規制できます。ミネアポリスでは車内に人間の監視員を置く条例案が検討され、サンディエゴ市議会は空港へのWaymo車両の進入を阻止し、緊急時に自治体が自動運転車を直接管理できるよう求める決議を可決しました。
カリフォルニア州では、市が車両台数や運行時間を制限したり、自治体内の許可を停止したりできるようにする法案が検討されています。緊急時に警察や消防が車両を物理的に操作する手段、または遠隔で停止させる仕組みを事業者に求める案もあります。事業者は展開に際し、カリフォルニア州公共事業委員会(CPUC)の運行許可などを取得します。
テキサス州では2025年9月1日にSB 2807が発効し、商業目的で無人の自動運転車を運行する事業者に州の許可を求める制度が設けられました。テキサス州車両局(DMV)が許可を扱い、危険な運行があれば一時停止、取り消し、または失効させることができます。
テキサス州の許可と市の監督
テキサス州の規則は2026年2月27日に発効しました。ただし、事業者が州法と規則に従う期限は、2026年5月28日と州公安委員会が定める規則の発効から90日後のうち、遅い方とされています。
許可申請には車両情報や登録・所有権に関する情報が含まれます。自動運転システムの作動中に交通法規違反があった場合、州法に基づき、許可を持つ事業者に違反通知が出されます。DMVは、安全な運行状態にない車両が公道で危険を生じさせると判断した場合、許可を停止、取り消し、または失効させることができます。
市の権限も残ります。オースティン市は交通違反や駐車違反への対応に加え、消防、警察、救急機関などと安全作業部会を設け、運行上の問題を記録し、事業者や州・連邦機関と情報を共有しています。市は自動運転車に通常の違反切符を渡すのではなく、交通上の軽犯罪について裁判所に申し立てます。
緊急対応の課題が規制を後押し
オースティン市の消防関係者は、Tesla Cybercabにハンドルやペダルがないため、停止車両を動かす必要が生じた際に問題となる可能性を指摘しています。市側は、自動運転車の開発者に迅速なレッカー移動手順と、緊急時に人間の担当者と連絡を取る仕組みを求めています。
NHTSAは2026年7月、無人運転車が緊急対応を妨げる事例が続いているとして、事業者に対応を求めました。同機関は、車両が活動中の緊急現場へ進入したり、救急車や消防車の進路を塞いだりした事例を記録したとしています。点滅灯、発炎筒、煙、火災、交通コーンに反応できなかった例も挙げました。
NHTSAは自動運転車の開発・運行事業者に緊急対応要員との連携を優先するよう求め、同月末までに解決策を聞く会合を開く方針を示しました。オースティン市は、申請時のファーストレスポンダー計画に、運行支援担当者との連絡方法、車両の安全な撤去・けん引方法、自動運転モードの識別方法を含める制度を設けています。
事業者は地域ごとの許可に対応
規制強化の動きは民主党系の自治体に限りません。ケンタッキー、オクラホマ、サウスダコタ、アイオワの各州でも規制を厳しくする動きがあり、カリフォルニア州でも自治体の運行制限権を広げる案が検討されています。
事業者側は、州法で自治体ごとの禁止を制限できる地域を優先しています。Waymo、Zoox、Auroraは、州法が自治体による技術の禁止を防ぐ地域を重視しています。業界団体の自動運転車産業協会も、より統一された基準に向けて連邦政府による州法の先占を求めています。
Waymoはロンドン、東京、ミュンヘンへの拡大を計画し、Uberはマンチェスター、マドリード、ドバイでの車両展開を準備しています。米国内では連邦、州、市、空港当局の規制が重なるため、運行許可や緊急時の手順を地域ごとに調整する状況が続いています。








