
カナダ残留を選ぶ票が3分の2を超える
カナダ西部のアルバータ州で10月19日、州政府が独立に向けた拘束力のある住民投票を実施するため、法的手続きを始めるべきかを問う投票が行われました。暫定結果では、回答者の3分の2を超える人がカナダの州として残る選択肢を選びました。
投票用紙は、アルバータ州がカナダの州として残るか、州政府がカナダ憲法の下で拘束力のある独立住民投票を実施するための法的手続きを始めるかを尋ねる内容でした。
カナダのマーク・カーニー首相は、アルバータ州民が「団結」を選んだとして結果を歓迎しました。ダニエル・スミス州首相も「統一されたカナダの中で、より強いアルバータ州を選んだ」と述べました。スミス氏は独立運動に反対していましたが、州民が投票を求める意思は明白だとして、投票の実施を進めていました。
分離をめぐる運動と州内の論点
独立を求める運動は、州民投票を求める署名活動を数カ月続けました。分離を求める市民団体が集めた約30万筆の署名による請願は、先住民族への協議を欠くとして裁判官に阻止されましたが、スミス州首相は投票を実施しました。分離反対を求める別の団体は、40万筆を超える署名を集めました。
分離派は、石油資源が豊富なアルバータ州の経済成長が、オタワの連邦政府による環境政策で抑えられていると主張しました。一方、分離に反対する側は、米国との貿易摩擦など外部からの圧力に向き合うには、カナダが一体となるべきだと訴えました。
アルバータ州では歴史的に、資源と連邦・州の権限をめぐる対立が続いてきました。天然資源の管理権は1930年に連邦政府から州政府へ移されましたが、州をまたぐ取引は連邦政府の規制権限に関わります。1970年代から80年代には、エネルギー資源の利益をめぐる対立が西部とオタワの不満を深め、1980年の国家エネルギー計画もその緊張を強めました。
独立には憲法改正と交渉が必要
カナダの明確性法は、州の住民投票で独立への賛成があっても、それだけで州が一方的に分離できるとは定めていません。分離を実現するには憲法改正が必要で、その交渉には連邦政府と少なくとも全州の政府が関わります。この法は、住民投票の結果を受けて独立交渉を始めるかどうかを判断する枠組みを設けています。
住民投票の設問が明確かどうかは、州政府が設問を公表してから30日以内に下院が検討し、決議で判断します。設問が、州がカナダの一部でなくなり独立国家となるべきかについて、住民の意思を明確に表せる内容かが審査されます。独立以外の選択肢も含めて意思を尋ねる設問や、独立の是非を直接問わず交渉への委任だけを求める設問は、明確な意思表示にならない場合があります。
投票後に交渉へ進めるかを判断する際、下院は独立賛成票の割合や投票資格者のうち投票した人の割合などを考慮します。また、州議会の各政党、他州や準州の政府、上院、先住民族の代表者の見解も考慮対象です。下院が明確な多数の意思が示されたと判断しない限り、連邦政府は分離条件の交渉に入れません。
ケベック州の前例と投票後の動き
カナダの州が分離を問う投票を行うのは、ケベック州の1980年と1995年の住民投票以来です。1980年は独立交渉を始める案が反対多数となり、1995年の投票も僅差で反対派が勝ちました。その後、カナダ最高裁判所の判断を受けて明確性法が制定され、設問と賛成多数の明確さを下院が判断する制度が整えられました。
ケベック州の主権運動とアルバータ州の分離運動は、求めるものや運動の性格が異なるという見方があります。ケベック州の政治家らは、ケベック州の主権派が文化と言語のアイデンティティーを重視する一方、アルバータ州の分離派は経済や政治的な自律を重視すると述べています。今回のアルバータ州の設問は、将来の拘束力ある投票に向けた手続きを問うもので、ケベック州の住民投票とは手続き上の違いもあります。
投票後も、分離派の指導者ジェフリー・ラス氏は運動を続ける考えを示し、スミス州首相の与党内で同氏を退陣させ、分離に近い党首を選ぶ動きを進める意向も伝えられています。スミス氏は投票結果を受け、州の今後について演説する予定でした。同じ投票用紙には移民政策に関する5問とカナダ憲法に関する4問もあり、初期結果では州の移民受け入れ数への関与を強める案なども賛成多数となる見込みです。






