Priscilla Chan and Mark Zuckerberg stand together, smiling.
出典: chanzuckerberg.com

マーク・ザッカーバーグ氏の資産は2,000億ドル(約32兆円)を超えていますが、妻プリシラ・チャン氏と2015年に表明した寄付の方針により、3人の娘がその大半を相続する予定はありません。夫妻はFacebook株の99%を生涯にわたって手放すとし、寄付や社会活動の受け皿としてチャン・ザッカーバーグ・イニシアチブ(CZI)を設立しました。

Facebook株の99%を寄付する方針

夫妻が方針を公表したのは、長女マキシマさんの誕生後の2015年12月です。当時、対象としたFacebook株は約450億ドル(約7兆1,000億円)相当でした。

夫妻は公開書簡で、次世代のために世界をより良くする責任があると述べ、Facebook株の99%を生涯にわたって寄付すると表明しました。Facebookは現在のMetaにあたります。

この方針は、夫妻の資産の大半を娘たちへ承継させないことにつながります。世界ではベビーブーマー世代から若い世代へ、推計124兆ドル(約20,000兆円)の資産が移ると見込まれています。

CZIをLLCとして運営

CZIは、一般的な民間財団ではなく、有限責任会社(LLC)として設立されました。LLCは非営利団体への資金提供に加え、営利企業への投資や政策提言にも取り組めます。

民間財団には、毎年資産の少なくとも5%を適格な慈善支出に充てる要件がありますが、LLCには同じ支出要件がありません。財団は税控除を受けられる一方、LLCへの資産移転では、LLCが慈善団体などへ寄付するまで控除が生じない仕組みです。

情報公開の扱いにも差があります。民間財団は申告書などを一般公開する義務がありますが、LLCには同様の公開要件がなく、投資先や契約先を公表せずに活動できます。

投資や政策提言の選択肢

民間財団は営利企業への投資に制限があり、立法に影響を与える活動への資金提供や参加も禁じられています。LLCには同じ制限がなく、営利投資や政策提言を活動に含められます。

ただし、LLCへの資産移転時に慈善寄付の税控除を受ける仕組みではありません。LLCが収益を得た場合は、一般にその所得が所有者側の課税対象になります。

CZIは初期にカリフォルニア州の住宅の手頃さや刑事司法改革など幅広い課題に取り組み、近年はAIを活用した生物医学研究へ中核的な資金を振り向けています。運営形態の柔軟さは、こうした投資や活動の選択肢と結びついています。

Metaでの議決権は過半数

ザッカーバーグ氏はMeta株の約13%を保有しながら、議決権の61%を握っています。MetaのA種株は1株につき1票、B種株は1株につき10票で、同氏は発行済みB種株の99.7%を保有しています。

この複数議決権の仕組みでは、株式の経済的な保有割合と、株主総会での議決権の割合が異なります。Metaの2025年株主総会では、A種株とB種株を合わせた議決権の92.61%に相当する株式が出席または委任されました。

夫妻の寄付方針は資産の大半を次世代へ残さない一方、Metaの経営に関わる議決権は過半数を維持する構造です。CZIは財団とは異なるLLCの仕組みを通じ、寄付に加えて投資や政策提言を行っています。