
絶滅した飛べない鳥モアのほぼ完全な卵がニュージーランドへ戻り、先住民のンガイ・タフ(Ngāi Tahu)に託されました。ピーター・ジャクソン氏と遺伝子技術企業コロッサル・バイオサイエンシズが取得に協力しました。修復後の保管や研究は、ンガイ・タフ側と連携して進められる予定です。
競売に出た卵をンガイ・タフへ返還
卵は高さ22.2センチ、直径17.1センチで、2025年6月に米コロラド州の競売に出品されました。ニュージーランドで1966年に発見されてから約60年間、個人コレクションに保管されていました。
ジャクソン氏とコロッサルが取得した卵は、2026年の鳥類古生物学・進化学会の国際会議で、歴史学者でンガイ・タフの指導者でもあるテ・マイレ・タウ氏に引き渡されました。タウ氏を通じてンガイ・タフの人々に託されます。
卵には多数の破片が残っており、組み立て直された部分にも再接合が必要です。ジャクソン氏は、専門家による修復後、この卵が知られている「ほぼ完全な」モアの卵として9例目になり、保存状態では上位5例に入る可能性が高いと述べています。
モアの卵から種を特定した古代DNA研究
モアはニュージーランドに生息していた飛べない鳥で、種によって体格や卵の形態が異なります。卵殻は化石や遺跡から見つかりますが、全体が残る卵は希少で、2010年の研究時点では36個が知られていました。
研究者は、卵殻の内側と外側から古代DNAを取り出すため、従来と異なる抽出手順を用いました。調べた117試料のうち83試料からDNAを回収し、内側の卵殻69試料の配列を使って、当時認識されていた10種のうち7種を特定しました。
同じ研究では、再構成された希少な卵6個も種レベルで同定されました。また、エウリアプテリクス属の卵殻には厚さの異なる2系統があることを示し、別々の種である可能性を指摘しています。コロッサルは今回の卵についても、種の特定に向けたDNA採取、非破壊画像化、産地を詳しく調べる同位体分析を研究候補に挙げています。
返還後の研究はンガイ・タフと連携
ンガイ・タフは、自らの部族領域と祖先から受け継いだ景観を守る責任を「カイティアキタンガ」と表現しています。環境の保護・管理に関わる考え方で、土地や資源を次世代へ引き継ぐ責任とも結びついています。
ンガイ・タフは、ニュージーランドの和解協定を通じて部族の taonga(大切な遺産・宝)を所有し、重要な意思決定機関に参加する権利を得たと説明しています。祖先とのつながりや歴史を認めることに加え、カイティアキタンガを実践する仕組みとして位置づけています。
今回の卵は文化的に重要な taonga とされ、研究を含む今後の扱いはンガイ・タフの承認のもとで調整されます。コロッサルの最高科学責任者ベス・シャピロ氏は、ンガイ・タフ研究センターやカンタベリー博物館と協力し、得られた成果をニュージーランドへ戻す方針を示しました。









