
衛星レーダーが捉えた地下の構造
エジプト北西部のナイル・デルタにある古代都市ブトで、約2,600年前のサイス朝時代に築かれた大型の泥レンガ造りの建造物が見つかりました。衛星レーダーと電気探査で地下を調べ、試掘で壁と砂の層を確認しました。
調査地点は、現在のテル・エル・ファラインにあたるブトの遺跡です。ブトは下エジプトのコブラの女神ワジェトと結びつく宗教都市で、遺跡には複数の時代の居住層が重なっています。
研究チームは欧州宇宙機関のSentinel-1衛星が取得したレーダー画像を分析し、コムCの地下に長さ約128メートル、幅約62メートルの楕円形の異常を見つけました。レーダーは地表の水分や反射の違いを捉え、埋没構造を探す手がかりになります。
電気探査で深さごとの層を調査
異常の位置を詳しく調べるため、チームは電気抵抗トモグラフィー(ERT)を実施しました。地中に電流を流して電気抵抗の分布を測り、地下の構造を画像化する方法です。
調査では約5,400平方メートルの範囲に15本の測線を設けました。地表から約3メートルまでには、プトレマイオス朝時代やローマ時代の泥レンガ、土器片、石灰岩片が散在していました。
その下の深さ約3〜6メートルでは、サイス朝時代の大きな泥レンガ造りの構造が確認されました。用途として墓、神官の住居、宗教施設などが考えられていますが、建物の役割は特定されていません。

建物を支えた厚い砂の層
さらに深い約6〜7メートルでは、厚く清浄な砂の層が見つかりました。約10メートル四方の試掘区を深さ約6〜7メートルまで掘り、泥レンガの壁がこの砂層の上に載っていることを確かめました。
ナイル・デルタの粘土は水分を吸って膨張し、乾燥すると収縮する性質があります。研究チームは、建設時に砂を敷いたことで建物の重さが分散され、地下水の排出や泥レンガへの水分上昇の抑制につながったと解釈しています。
出土品が示す宗教的な手がかり
試掘では、ウシャブティやシャワブティと呼ばれる小像も見つかりました。これらは墓に置かれ、死者の来世での奉仕を担うとされる像です。

周辺からは石灰岩製の祭壇も出土し、彫られた溝には動物の血と整合する乾燥残留物がありました。研究チームは、祭壇と残留物を供物の儀式が行われた可能性を示す手がかりとして扱っています。
トト神と結びつく種類のファイアンス製ヒヒ像も見つかりました。
次回調査でより深い層へ
チームは再訪を計画しており、電極間隔を広げた電気探査で、さらに深い地層を調べる予定です。古代植物の専門家や地質の変化を研究する専門家も加わり、建設当時のブト周辺の景観を再構成する方針です。












