
アイシンと東北大学のチームが、AIモデルの重みデータとOSの起動データをチップ内に保存するAI SoCを開発しました。電源投入からOS起動まで65.7ミリ秒、物体検出の処理時間は従来方式の約10分の1になりました。Tiny YOLOv3による1フレームの推論エネルギーは50.7ミリジュールです。
重みとOSをチップ内に保持
開発したのは、32MBのSTT-MRAMを搭載する16nm FinFETプロセスのAI SoCです。CPU、GPU、AIアクセラレータも1つの半導体チップに集積しています。
STT-MRAMは、磁性体の磁化状態で情報を記録する不揮発性メモリです。電源を切ってもデータを保持でき、待機時のリーク電力を抑えられるほか、高速な読み書きが可能です。 一方、DRAMは揮発性メモリで、従来方式では電源投入後に初期化が必要でした。
今回のSoCは、AIモデルの重みだけでなく、OSのブートデータもSTT-MRAMに格納します。電源を入れた後、外部のSSDやDRAMからデータを読み込む工程を減らし、モデルの重みをチップ内のメモリから直接読み出して処理します。
起動と物体検出を高速化
電源投入からカーネル起動までの時間は、従来方式の2,535.3ミリ秒から65.7ミリ秒に短縮されました。発表資料では、従来方式に対して38.59倍の高速化としています。
物体検出には、画像内の物体の種類と位置を検出する小型AIモデル「Tiny YOLOv3」を使いました。AI処理時間は594.6ミリ秒から58.5ミリ秒となり、10.16倍短縮されています。
システム全体での時間短縮は25.2倍で、Tiny YOLOv3による1フレームの物体検出に必要なエネルギーは50.7ミリジュールでした。発表資料は、このエネルギー消費量を従来方式の50分の1としています。
限られたメモリ容量に合わせた設計
内蔵メモリの容量を活用するため、8ビットと16ビットの乗算を組み合わせる方式を採用しました。16×16、16×8、8×8ビットの乗算を使い、16ビットの精度を維持しながら、重みデータ量を17.7MBから9.36MBへ53%削減しました。
物体検出精度を示すmAPは、従来の0.325から0.316になりました。重みデータ量の削減とともに、精度の測定値も公表されています。
さらに、4×4のタイル内で同じカーネルの重みを複数のクロックサイクルにわたって再利用する重み共有技術を取り入れました。従来方式ではAI処理前にSSDからDRAMへ12MBの重みを転送していましたが、今回の方式ではその転送を介さず、STT-MRAMから読み出します。
学会発表と今後の応用
研究成果は、2026年11月1日から4日まで台湾・新竹市で開催されるIEEE Asian Solid-State Circuits Conference 2026で発表されます。 発表資料では、成果の一部に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務が含まれるとしています。
東北大学とアイシンは、今後、メモリ容量や演算性能、エネルギー効率の向上を進め、自動車、ロボット、産業機器、センシング機器などへの応用を目指しています。
アイシンは自動車部品を供給していますが、このSoCを量産する時期や車載製品への採用時期は明らかにしていません。










