患者由来の腫瘍モデルで確認された攻撃
小細胞肺がん(SCLC)は進行が速く、5年生存率は7%未満とされます。免疫から身を隠す性質を持つこのがんに対し、γδ(ガンマ・デルタ)T細胞が実験室で腫瘍細胞を攻撃し、既存薬2剤との併用で攻撃が強まることが報告されました。
研究チームは、患者から提供された検体を使って小型の腫瘍モデルを作製し、同じ患者の血液から取り出したγδT細胞と組み合わせました。このモデルでは、γδT細胞がSCLC細胞を認識して殺す働きを示しました。
過去の免疫療法試験IMpower133とCASPIANのデータを分析したところ、腫瘍内にγδT細胞が多い患者ほど治療反応が良好な傾向が見られました。これは患者データ上の関連で、研究チームは患者由来の腫瘍モデルで細胞の攻撃も検証しました。
γδT細胞ががんを見つける仕組み
γδT細胞は、T細胞受容体(TCR)を使いながら、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)に依存せずに標的を認識できます。αβT細胞を中心とする免疫細胞とは異なる認識経路を持ち、免疫をかわす腫瘍を攻撃します。
γδT細胞は、TCRに加えて、NK細胞にも見られる受容体を使い、細胞のストレスに伴う分子を認識することがあります。二つの認識経路が、腫瘍を見つける働きや細胞傷害性に関わります。
一部のγδT細胞は、腫瘍細胞に蓄積するリン酸化代謝物を手掛かりにします。ゾレドロン酸は代謝酵素FPPSを阻害し、リン酸化代謝物の一種であるIPPを増やして、γδT細胞の活性化を促す仕組みが報告されています。
タルラタマブとゾレドロン酸の役割
タルラタマブは、免疫細胞のCD3とSCLC細胞のDLL3というタンパク質に結合する二重特異性T細胞誘導薬です。両方に結合してT細胞とがん細胞を近づけ、T細胞による攻撃を助けます。
患者由来腫瘍モデルでは、タルラタマブがγδT細胞を標的に近づけ、がん細胞への攻撃を強めました。ゾレドロン酸はγδT細胞の数を増やし、腫瘍を認識する力も高めました。2剤を併用すると、γδT細胞の攻撃力がさらに強まりました。
米国ではタルラタマブは、プラチナ製剤による化学療法中または治療後に病勢が進行した成人の進展型SCLCに承認されています。承認は腫瘍縮小率と奏効期間に基づく迅速承認で、サイトカイン放出症候群のリスクを抑えるため、段階的な用量設定で投与します。同薬では神経毒性も起こり得るため、治療中の監視が必要です。
次の検証と治療への展開
今回の結果は実験室で得られました。研究チームは今後、動物モデルで検証し、患者を対象とする臨床試験へ進む計画です。γδT細胞を体外で増やして患者に戻す養子細胞療法も、治療への応用候補です。
腫瘍内のγδT細胞の量に加え、BTN2A1という分子が免疫細胞の標的マーカーとなる可能性も、免疫療法への反応を予測する手掛かりとして研究されています。ゾレドロン酸でγδT細胞の数や反応性を高める方法も、細胞数が少ない患者への応用可能性が検討されています。









