
プロテリアルとFEVは、アモルファス合金と重希土類を使わないネオジム磁石を採用したxEV駆動モーターの設計をシミュレーションで検証しました。最大出力230kW級の参照モデルに対し、最大出力300kWと約27%の軽量化を両立し、走行サイクルで効率が高まる結果を得ました。実機の測定ではなく、設定条件に基づく解析結果です。
シミュレーションで出力と効率を比較
FEVは、市販BEVの主要な出力帯に相当する最大出力230kW級の駆動ユニットを想定し、モーターコアにけい素鋼板を使う参照モデルを設定しました。検討モデルでは、コアにアモルファス合金を使い、プロテリアルの重希土類フリー磁石を採用しています。
検討モデルのピーク出力は300kWで、参照モデルの230kWを上回ります。モーター重量は参照モデルを100%とした場合に72.8%で、約27%の軽量化に相当します。有効長も参照モデルの77.1%とされました。
効率はWLTP Class 3で参照モデルの95.5%から97.9%へ、ARTEMIS MW 150走行サイクルでは95.3%から97.4%へ向上しました。WLTP Class 3は市街地から高速道路までを含む走行条件を模擬する評価法で、ARTEMIS MW 150も自動車の効率評価などに用いられる走行パターンです。
材料特性を生かすモーター設計
アモルファス合金は、結晶構造を持たない金属材料です。プロテリアルによると、モーターコアに一般的に使われるけい素鋼板より鉄損が小さく、検討ではこの特性を生かす設計を評価しました。
今回の設計は、コア材料を単純に置き換えるものではありません。インバーターや減速機を含む駆動システムの動向を踏まえてモーターの最大回転数を高め、減速比も調整し、車両走行時の最大トルクと最高速度を参照モデルと同等にする条件を設定しています。
磁石には、高い残留磁束密度による磁気特性と、高い保磁力による耐減磁性を両立する重希土類フリーのネオジム焼結磁石を適用しました。重希土類はテルビウムやジスプロシウムなどの希土類元素です。プロテリアルは、重希土類への依存を避ける設計が資源・調達リスクの低減にもつながるとしています。
過去の試作で示された加工上の課題
アモルファス金属は、電磁鋼板と比べて加工が難しく、複雑な形状への加工では生産性が課題でした。日立金属は2018年、鉄心全体ではなく、歯に当たるティース部分にアモルファス金属を使う構造を開発し、せん断加工した材料を積層する方法を実証しました。
日立金属はこの構造について、比較的容易に低損失な鉄心を製造できると考えられる方式として検討したと説明しています。試作モーターにはアモルファス金属のほか、ボンド磁石やエナメル線も使われ、定格出力11kW、外径215mm、積厚80mmの構成で評価されました。
試作機の効率は97.2%で、日立金属の発表ではIE5クラスに適合しました。また、ラジアルギャップ型を採用し、現行の製造技術で生産できる固定子コイル構造にしたとしています。これは今回の300kW級の検討モデルとは別の試作結果で、今回の成果はシミュレーションによる設計評価です。
両社は駆動システム全体の検討を継続
プロテリアルとFEVは、材料単体の特性だけでなく、モーターと駆動システム全体で得られる効果を定量的に評価する共同検討を続ける方針です。プロテリアルは用途に応じて材料の価値を検証し、FEVは電動駆動システムの設計やシミュレーション、システム統合の知見を生かすとしています。
両社は成果を2026年10月5日から7日までドイツ・アーヘンで開かれるAachen Automotive Colloquiumで共同発表する予定とし、FEVのブースでは検討したモーター構造の模型を展示するとしていました。
プロテリアルは、xEVに加えてeVTOLやヒューマノイドロボットなどへの応用も展望に挙げています。今回の解析値は設定条件に基づくシミュレーション結果で、製品の保証値ではありません。








