
永久凍土に蓄えられた炭素が大気へ
永久凍土は、少なくとも2年間、地中の温度が氷点下に保たれる地盤です。植物や動物の遺骸を長期間凍らせ、分解による温室効果ガスの発生を抑えてきました。北極圏の気温上昇で凍土が融けると、蓄積した有機物の分解が進み、メタンや二酸化炭素が大気に放出されます。
アラスカの湖畔では、地中からメタンの泡が浮かび上がる様子が観察されました。永久凍土の融解で地中の炭素が放出されると、化石燃料の燃焼などで増えた温室効果ガスに加わり、温暖化を進める要因になります。
北極圏は以前、植物が大気中の炭素を取り込み、凍土に蓄えることで、放出量より吸収量が多い地域でした。しかし、数年前からその収支が変わり、永久凍土を含む北極圏が、炭素を吸収する側から放出する側へ移ったと研究者は説明しています。
温暖化への影響は複数の推計で検討
2012年の研究は、永久凍土の炭素が気候に及ぼす影響を、気候モデルを使って試算しました。研究では、永久凍土から2100年までに放出される炭素を680億〜5080億トンと推定しました。
同研究は、永久凍土からの炭素放出と気候の相互作用によって、2300年までに追加で0.13〜1.69度の昇温が生じる可能性を示しました。この推計は、21世紀に人為的な排出がどの経路をたどるかに左右されないとされています。
別の研究は、永久凍土、湿地、淡水域、森林火災の4種類の自然由来の排出を合わせ、2100年までの追加昇温を0.2〜0.4度と推定しました。これは2020年以降の人為的な温暖化を20〜30%押し上げる規模で、追加分の約半分をメタンが占めるとされています。
炭素予算の試算にも融解や火災を反映
2026年の研究は、永久凍土の緩やかな融解に加え、地盤の急激な崩落を伴う融解と、火災による炭素放出をモデルに組み込みました。研究チームは、これらの過程を含めることで、パリ協定の気温目標に沿って今後排出できる炭素量が変わるかを試算しました。
その試算では、2025年以降に残る炭素予算は、1.5度目標を達成する場合に25%(誤差幅12ポイント)、2度目標では17%(同7ポイント)減少しました。
一方、4種類の自然由来の排出を扱った研究では、国連の気候モデルのうち、湿地と淡水域の温暖化に伴う排出を含めたものはなく、永久凍土を含めたものは2モデル、森林火災を含めたものは5モデルでした。研究チームは、こうした排出の反映が将来の温暖化見通しや排出削減目標の検討に関わるとしています。
融解後のガス発生は地形や水分で異なる
シベリアのレナ川デルタにあるクルンガナフ島で行われた実験では、融解後のガス発生を調べるため、土壌試料を酸素のない条件で培養しました。試料は高地から斜面、氾濫原まで異なる地形から採取され、4度と20度で培養されました。
生育期に相当する60日間の実験では、高地と斜面のヤエドマ土壌はガス発生の遅滞期にとどまりました。一方、20度で培養した氾濫原の試料では、メタンと二酸化炭素の生産量がともに高くなりました。
永久凍土層のヤエドマ試料では、培養開始から6カ月後にメタンの生産が始まりました。
地盤の崩落も暮らしやインフラに影響
永久凍土が融けると、地中の氷が失われて地面が沈んだり、崩れたりすることがあります。アラスカ北部では深さ約3メートルの陥没地形が見つかり、研究者らは衛星画像から北極圏全体で4万カ所以上の同様の地形を確認したと報告しています。
永久凍土は住宅や道路、パイプラインを支えてきましたが、融解による地盤の不安定化は、こうした構造物にも関係します。山や建物を支える地面が凍結している状態を保てなくなるためです。










