非言語音の聞き分けと英語の母音
日本語話者が英語の音を学ぶ際、音の小さな違いを聞き取る力が母音の区別と関連することが研究で示されました。言語音ではない音の周波数などの差を聞き分ける能力が高い学習者ほど、英語の母音を区別する課題でも成績が高い傾向にありました。
対象は英語を学ぶ日本語話者です。研究チームは、英語の /æ/(「cat」の母音)と /ʌ/(「cup」の母音)のように、日本語の母音にそのまま対応しない音を聞き分ける課題を用いました。
聴覚精度の測定では、音程や長さなどがわずかに異なる非言語音を区別してもらいました。機能的磁気共鳴画像法(fMRI)による測定では、英語の母音のペアと非言語音のペアが同じか異なるかを判断する際の脳活動を調べました。
聴覚精度と脳の処理
非言語音の細かな違いをより正確に聞き分けた人ほど、英語の母音の違いも正しく判断する傾向が見られました。この関連は、留学経験や発音訓練の経験を考慮した後にも認められ、オンラインで行った140人の実験と、脳活動を測った67人の実験の両方で確認されました。
脳活動にも違いがありました。聴覚精度が高い学習者は、英語の音を処理するとき、言語処理に関わる脳の左側の感覚運動系への依存が比較的小さく、非言語音を処理するときに近い活動パターンを示しました。
一方、聴覚精度が低い学習者は、英語の音を聞く際に左側の感覚運動系への依存が大きく、慣れた日本語の発音パターンを使って未知の音を処理する傾向が見られました。研究チームは、母語の音の枠組みが新しい音の聞き取りに影響する可能性を論じています。
音を聞く力と発音訓練
今回の研究は、非言語音の聞き分け能力と、英語の母音を処理する際の脳活動との関連を扱っています。研究者らは、語彙の暗記や会話を聞く練習に加え、音の細かな違いを捉える力を伸ばす訓練も語学学習に役立つ可能性を示しました。
成人の第二言語学習を扱った別の研究では、中国人大学生が英語の /θ/ と /s/、/ð/ と /z/ の区別を学びました。参加者は、聞き取り中心の訓練、発音中心の訓練、訓練を行わない対照群に分けられました。
訓練後、聞き取り中心と発音中心の両群では対象音の知覚と発音が改善し、その変化は1か月後の測定でも保たれました。発音中心の群は訓練直後と1か月後の両方で、聞き取り中心の群より知覚・発音の成績が高く、対照群では有意な変化がありませんでした。
聴覚能力と訓練を考える際の違い
第二言語の音の学習には、非言語音を聞き分ける能力とは別に、音声そのものを区別する能力が関わる可能性もあります。2015年にオランダ語・英語の後期バイリンガルを対象とした研究では、英語の母音をよく区別できる群と苦手な群の間で、純音を処理する際の脳反応に差は見られませんでした。
同じ研究では、母語・未知の言語・第二言語の音素を処理する際の反応が、英語の音を区別するのが苦手な群で弱くなっていました。この結果は、第二言語の音の学習における個人差が、純音の聞き分けとは異なる、音声に特有の能力に由来する可能性を示しています。
今回の研究は、非言語音の聴覚精度と英語母音の処理との関連を調べたもので、特定の訓練方法の効果は比較していません。訓練方法を比較した別の研究では発音中心の練習が聞き取り中心の練習を上回りましたが、対象となった学習者と音の組み合わせは異なります。








