
OEMから自社ブランドへ転換
1954年創業の縫製メーカー、マルチョウは、日本の縫製技術を発信する自社ブランド「GOOD PEOPLE GOOD STITCHING GOOD PRODUCT(GGG)」を2023年秋冬シーズンに始めました。代表取締役の長谷川剛氏は、国内の産地や工場を守り、技術を次世代へ継承することをブランドの目的に掲げています。
GGGの立ち上げは、工場側がデザインや企画も提案するODM事業の展示会から始まりました。展示会を4回開くうち、取引先からGGGの名前のまま商品を販売したいという要望が増え、長谷川氏とクリエイティブディレクターの中城大祐氏がブランド化を決めました。
中城氏は、工場名だけでは展示会でバイヤーの目に留まりにくいと考え、工場の哲学を表すブランド名を付けました。一般向けのブランドとして再出発する際には、商品企画や世界観を見直し、工場の稼働時期や生産ラインを含む社内体制も整えたといいます。
縫製技術を服の構造に生かす
中城氏が掲げるコンセプトは「フューチャークラフツ・イン・メゾン」です。技術革新と工芸的な考え方を組み合わせる立ち位置を「クラフツマンメゾン」と呼び、デザインには「ミニマリズム」と「フューチャークラフツ」の二つの基準を設けています。
具体例の一つが、薄手のコットンカットソーです。通常は裾を折り返して二本針で縫うところを、マルチョウが商標登録する改造ミシン「エムロック」で縫い代を1ミリに抑え、カラロックで始末します。中城氏は、生地の使用量や肌への当たりを抑え、とろみのある風合いを保つための方法だと説明しています。

別のアイテムでは、ニットのように見えるジャージー素材のトップスを開発しました。縫い代を包んで仕上げる縫製方法の開発に2年をかけたと中城氏は話します。また、布帛のスーツやジャケットには、裏地を使わずに仕立てる特殊な縫い方「エムロック0ワイド」を採用した新作もあります。
卸先の拡大と次の発信
2026年秋冬シーズンの卸先は国内31、海外7の計38アカウントです。2027年春夏シーズンには、国内40、海外20の計約60アカウントに増える見込みだと長谷川氏は述べています。国内ではセレクトショップを中心に取引し、百貨店や駅ビルでポップアップも行っています。

海外では、パリ・ファッションウィーク期間中の展示会「tokyo sense」や、メンズファッション見本市「ピッティ・イマージネ・ウオモ」に出展しました。ドイツのショールームがドイツ、スイス、オーストリアを担当することが決まり、北米への展開も準備しています。国内ポップアップでは、売り上げの約4割を訪日客が占めると中城氏は説明しています。
GGGは「TOKYO FASHION AWARD 2027」を受賞し、長谷川氏はブランドの思想や商品について発信を強める方針を示しました。中城氏は、受賞の副賞である国内外のポップアップに加え、イベントやプレゼンテーションで新作を紹介することも視野に入れています。海外向けにはサイズの拡充に着手し、デザイン性を追求した商品を増やす予定です。
国内縫製の縮小と認証制度
国内衣料品の自給率は、数量ベースで1991年の51.5%から2025年の1.1%へ低下しました。2025年は国内衣料品の供給量が前年比6.3%増えた一方、国内生産量は11%減の5341万点となり、輸入浸透率は98.9%でした。

秋田経済研究所がまとめた全国の繊維工業の統計では、事業所数は1999年の3万8124か所から2009年の1万7151か所へ減り、同期間に従業者数も51.5%減少しました。同研究所によると、労働集約型の繊維工業は、人件費の安い中国や東南アジアへの生産移転の影響を受けました。
同研究所の秋田県の統計では、繊維工業の事業所数は1999年の645か所から2009年の379か所へ減少し、従業者数は1万7115人から9074人へ減りました。衣服製造業では2004〜2006年に新設68か所に対し廃業は105か所で、廃業した事業所の87%は従業者30人未満でした。

マルチョウは「Jクオリティー・ファクトリーブランドプロジェクト」に参加し、中城氏と共同でものづくりを行いました。日本アパレル・ファッション産業協会が運営するJ∞QUALITYは、織布・編立、染色整理加工、縫製、企画・販売の4工程をすべて国内で行った商品を認証対象としています。
2023年の制度改定で、認証商品の下げ札に、商品の機能や生産工程を紹介するページへつながるQRコードが導入されました。改定時点で、承認企業や工場は約600、登録商品は約3700品番でした。また、織布・編立と染色整理加工を国内の承認工場で行うテキスタイル向けの認証も設けられています。
長谷川氏は、GGGの各シーズンで、ろうけつ染めやニードルパンチなど、失われつつある日本の加工技術を少なくとも一つ取り入れる試みを続けると述べています。ブランド事業と並行してOEM・ODM事業も続け、将来的には両事業を半々の比率にすることを目指しています。












