
電流が分子を回し、回転が電流を増やす
アウクスブルク大学などの国際研究チームは、電流で回転するらせん状の分子モーターを開発しました。分子が回転すると電気伝導度が高まり、電流が最大で約100倍に増える仕組みです。研究チームは、電流で駆動し、回転方向を制御できる分子モーターを初めて実証したとしています。
モーターの中心は、研究用に合成された、数百万分の1ミリメートルの大きさのらせん状分子です。分子は硫黄原子を介して金の電極に結合し、原子レベルで細い2本の金の先端の間に固定されました。
電圧をかけると、分子を通過する電子が角運動量を分子に渡し、回転を起こします。研究チームはこの仕組みを、風が風車を回す様子にたとえています。分子のらせんの向きが回転方向を定め、電圧の極性を変えると回転方向も反転します。
回転によって電気を通しやすい角度に移る
電極間の距離を精密に変え、研究チームは分子を引き伸ばしたり圧縮したりしました。測定では、電圧を加えると分子が回転し、一定の電圧を超えると連続回転へ移ることが確認されました。
アウクスブルク大学の研究チームは、量子力学に基づくコンピューターシミュレーションで、回転と電気伝導の関係を調べました。計算では、電気伝導度は分子の回転角度に強く左右され、回転中に最大で2桁、つまり約100倍高まりました。
静止時には分子が取りにくい角度でも、回転中は電子をよく通します。回転が電気伝導を高め、その電流がさらに分子の運動に関わるため、電気の流れと機械的な動きが結びついています。
別の分子モーター研究が示す角運動量の伝達
電流から分子へ角運動量を渡す仕組みは、別の分子設計を扱った研究でも検討されています。その研究では、三脚状の土台、回転軸、キラルな回転部を持つ分子を設計し、回転軸に炭素三重結合を使いました。
この設計では、らせん状の分子軌道を流れる循環電流が軌道角運動量を運び、それが回転部に機械的な力を及ぼすという機構が提案されました。研究チームは電子状態と電流を理論計算し、三重結合の近くにある軌道が反対向きのらせん性を持つ組で現れることも示しました。
その研究では、電流の向きを変えても回転方向は変わらないと予測され、実験では回転方向に高い選択性が観測されました。今回の金電極間の分子モーターでは電圧の極性を変えると回転方向が反転します。両者は異なる分子構造と回転特性を持つ電流駆動の仕組みです。
分子機械の応用に向けた研究段階
今回の成果では、分子を金属電極に固定して電流で回転させ、回転による電気伝導の変化を捉えました。実験では個々の分子を電極間に架け、電極間隔を調整して測定しました。
研究チームは、分子電子部品やスピントロニクス、マイクロ流体システムへの応用可能性を挙げています。また、原子スケールの物理過程を調べる手段として、小型機械が新たな機会をもたらすとしています。
応用先として挙げられた分野で製品やシステムとして使われた成果ではなく、分子スケールの動作を示した研究です。









