
AIで開発した無料ソフト群「ArtCraft」は、Adobe Creative Cloudに似た画面と基本機能を備えますが、写真や動画の編集では互換性や処理精度に課題が残ります。Creative BloqのJoe Foley氏は3アプリを試し、既存ソフトの置き換えにはまだ早いと評価しました。
7つのアプリでAdobe製品を再現
ArtCraftは、ソフトウェアエンジニアのBrandon Thomas氏が開発したオープンソースのソフト群です。画像編集のPhotoCraft、RAW現像のLightCraft、動画編集のFilmCraftのほか、ベクター制作や印刷向けのアプリなど計7つで構成されています。
開発にはRustとAnthropicのClaude Opus 5.5が使われました。アプリはPC、Mac、Linux向けの初期アルファ版として提供され、アカウント登録なしで利用できます。インストーラーから導入でき、各アプリの容量は最大で約50MBです。
開発の動機はAdobeのサブスクリプション料金や解約手数料への不満です。開発者は著作権のあるものを複製していないと説明しています。Creative Bloqは、AdobeやMicrosoftの法務部門が注視する可能性を指摘しています。
LightCraftはマスクとRAW処理に難
LightCraftはAdobe Lightroomに似た配置で、明るさやトーンカーブ、色相・彩度・輝度などを調整できます。試用では、Canon EOS R5で撮影したCR3形式のRAWファイルをカメラから直接読み込めず、いったんPCへ移す必要がありました。
カメラやレンズに合わせた色・レンズプロファイルはありません。シャープネスを標準の40%に設定しても画像に強い処理跡が出て、マスクを使っても十分に改善しませんでした。被写体選択では猫を選べず、円形マスクのような結果になったといいます。
被写体選択やAIノイズ除去には、MetaのSAM 3モデルを手動で導入する必要があります。現像の基本調整は動作しますが、自動選択やプロファイルを含む既存ソフトの作業環境とは差があります。
PhotoCraftとFilmCraftは形式対応や速度が課題
PhotoCraftはPhotoshopに似た操作画面を持ち、PSD、TIFF、JPEG、PNGなどを開いて保存できます。試用ではHEICに対応せず、自動選択やマスク、コンテンツに応じた塗りつぶし、スポット修復の精度もPhotoshopより低く感じられました。
フィルターのプレビューが表示されず、ぼかしや粒子の強さを確認しながら調整できない場面もありました。Photoshopの生成塗りつぶしやテキストからの画像生成に相当する機能もありません。
FilmCraftでは、4K・25fpsおよび100fpsで撮影した10-bit 4:2:2映像をそのまま再生できず、HandBrakeで変換してから編集する必要がありました。最適化メディアを作る機能もなく、4K編集は遅くなりました。変換後はカットやトリミング、トランジションなどの基本操作ができますが、Premiereのプロジェクト形式である.prprojファイルは開けず、保存にも対応していません。
置き換えには互換性と安定性が必要
無料のAffinityは、Pixel、Vector、Layoutの作業領域を備え、RAW画像の調整やレイヤー編集に対応します。PCMagは、写真の読み込み・管理機能がなく、RAW画像の描写や調整の効果にも課題があると評価しました。Adobe製品から移る際は、対応形式だけでなく、現像済みデータや日常の作業手順も関係します。
開発者が掲げる「クリーンルーム再実装」は、著作権上の適法性を自動的に保証するものではありません。1996年のカーネギーメロン大学ソフトウェア工学研究所の参照モデルでは、クリーンルーム開発は仕様・設計の形式的な検証と、利用状況に基づく統計的テストを組み合わせる手法として定義されています。ソフトの画面や機能の再現と、開発工程の品質管理は別の論点です。
米国のGoogle対Oracle訴訟では、Java APIの宣言部分をAndroid向けに再実装した件について、連邦最高裁がフェアユースと判断しました。ただし、最高裁はソフトウェアのインターフェースが著作権保護の対象になるかどうか自体は判断していません。この判断は特定のコードと米国法に関するものであり、ArtCraftの個別の画面・機能や他国での扱いを決めるものではありません。











