
ExxonMobilの社内メモや科学者の証言から、同社が気候変動対策として宣伝した藻類燃料や二酸化炭素回収・貯留(CCS)について、社内では実現性や規模に懐疑的な見方があったことが分かりました。これらの記録は、気候変動をめぐる訴訟で争われる同社の広報活動と実際の技術開発との関係にも関わります。
1988年のメモに記された研究の目的
1988年、Exxonの研究部門にいたFrank Sprowは、温室効果ガスへの対策が世界的な合意となれば、同社に大きな悪影響が及ぶ可能性があると社内メモに記しました。
Sprowは温室効果ガスに関する研究開発の目標として、石油・ガス・石炭資産の価値を守り、Exxonの事業上の選択肢を維持することを挙げました。気候モデル研究を追い、原子力、太陽光、バイオ燃料などの代替技術を調べる案も示しました。
このメモは、マサチューセッツ州が2019年に起こした訴訟で提出された文書の一つです。SprowはWall Street Journalに、メモの方針が会社の方針として採用されたと述べたと報じられています。
藻類燃料の目標を科学者が「実現不可能」と証言
Exxonは藻類から燃料を作る研究を、石油に代わる持続可能な燃料の可能性として広報していました。一方、同社でこの研究に携わった科学者は、2018年のプレスリリースに記された「2025年までに1日1万バレル」という生産目標について、宣誓証言で誤解を招く内容だと認めました。
科学者は目標を「完全に実現不可能」と述べ、発表前に社内の関係者へ伝えていたと証言しました。Exxonが技術的な進展として公表した藻類研究の一つについても、実際には行き詰まっていたと説明しています。
Exxonはその後、藻類燃料の研究を打ち切りました。
CCSでは回収後の輸送と貯留も必要
CCSは、発電所や工場などから二酸化炭素(CO₂)を分離し、輸送したうえで、地下の地層などに長期間貯留する仕組みです。発電所では燃焼後の排気ガスからCO₂を分離する方法などがあり、回収したCO₂は貯留場所まで運ばれます。
Exxonは2014年のCCS資料で、広範な普及には大規模な投資が必要で、貯留量は最終的に現在の石油・ガス生産量に匹敵する規模になる必要があると記しました。費用が高く、市場ベースのインセンティブがないことも課題に挙げています。
2017年、Exxonの科学者は、同社をCCSのリーダーと呼ぶ広告表現に賛同できないと同僚に伝えました。当時の同社の事業は、主に天然ガス処理施設でガスからCO₂を取り除き、油田やガス田へ注入するものでした。科学者は、この事業が発電所や工場での排出削減を目的に宣伝されるCCSとは異なると説明しました。
設備は増加しているが、稼働量と計画容量は別
Global CCS Instituteによると、2025年7月時点で稼働中の商用CCS設備は世界に77件あり、前年の50件から54%増えました。
同研究所は、建設中の設備を47件、その年間回収容量を合計4,400万トンと集計しています。稼働中の設備と開発段階の計画を合わせた回収容量は年間5億1,300万トンで、前年から23%増加しました。
一方、稼働中の設備の回収容量は2025年7月時点で年間6,400万トンでした。稼働中の設備の容量と計画を含む容量は異なる指標です。
気候訴訟では責任の審理に進めるかが争点
マサチューセッツ州の訴訟では、Exxonが消費者や投資家に、温暖化を抑える取り組みを進めていると思わせた一方、実際には広報が中心だったと州が主張しています。州は罰金と、問題とする広報活動の差し止めを求めています。Exxonは気候変動について人々や投資家を誤解させたことを否定しています。
ボルダー市などがExxonとSuncor Energyを相手取った訴訟では、被告企業側が州法上の請求は連邦法に妨げられると主張してきました。連邦法による先占とは、連邦法が州法上の請求に優先し、その請求を認めないとする考え方です。
コロラド州最高裁は2025年、ボルダー側の州法上の請求は連邦法に先占されないと判断し、訴訟を州裁判所で続けるよう差し戻しました。ただし、請求の実体的な妥当性については判断していません。
2026年10月、米連邦最高裁はExxonとSuncorがこの訴訟の停止を求めた主張を審理しました。この判断は、州裁判所で進む石油会社へのほかの訴訟にも影響しうると報じられています。








