
120量子ビットのプロセッサーを4本のケーブルで接続
IBMの研究チームは、120量子ビットの超伝導プロセッサー2台を、4本の長距離カプラーで接続しました。カプラーは量子チップ間で量子状態をやり取りする接続部品で、今回使われた超伝導アルミニウム製の同軸ケーブルは長さ80センチです。
各カプラーは、チップ上の量子ビット2個、周波数を調整できるL量子ビット2個、RF-SQUID方式の結合器2個で構成されます。ケーブルはプロセッサーの面に対して垂直に取り付けられ、両方のモジュールを冷却装置に設置した後、室温でインジウム同士を圧着して接続しました。
量子プロセッサーを大きくする方法として、1枚のチップに量子ビットを集める代わりに、複数のチップを接続するモジュール方式があります。研究チームは、大規模な量子プロセッサー間に複数の接続を設ける構成を実証しました。
状態転送の平均忠実度は99%
今回の測定では、量子状態をリレー方式で転送したときのネットワークベンチマーク忠実度は平均99.00%で、最良の接続は99.29±0.07%でした。
別の測定では、離れたモジュールの量子ビット間でCZゲートを実行し、平均忠実度94.75%、最良の接続で96.42±0.28%を得ました。CZゲートは、量子ビット間に量子的な相互作用を作る操作です。
研究チームは、これらのゲートを使って2つのプロセッサーをまたぐ量子もつれ状態を作り、隣接する2本のカプラーでベル対を同時に生成する実験も行いました。量子もつれは、離れた量子ビットの状態が相関した状態です。
冷却装置のモジュール化と組み合わせる
超伝導量子ビットは極低温で動作するため、チップ間接続は冷却装置の内部に収める必要があります。IBMのモジュール型冷却装置は、各セルに真空槽、冷却機構、熱シールドを備え、複数のセルを接続して使う設計です。
セル同士をつなぐ際は、一方の開口部から隣のセルへ量子ケーブルを通し、熱シールドを連結して低温を保つトンネルを形成します。IBMは、この構造を使った冷却セルの試作機2台を接続して稼働させたとしています。
今回の研究では、モジュールを冷却装置に設置した後にカプラーを取り付けており、大型プロセッサー間に複数の接続を設ける手順を示しました。IBMは将来、冷却装置内で数百の量子チップを接続し、2029年までに耐故障型量子コンピューターを実現する目標を掲げています。
磁気干渉への対処と効率改善が残る
ケーブルは使用時のエネルギー損失が小さく、冷却と昇温を3回繰り返した後も動作しました。また、2つのチップ間で量子もつれを伝送できました。
一方、実験では磁気干渉が信号品質に影響しました。研究チームは、実際の利用に進む前に、接続の効率をさらに高める必要があるとしています。
研究成果は査読前のプレプリントとして公開されています。研究チームは、今回の4本の高忠実度カプラーを、モジュール型量子計算を拡張するための接続技術として位置づけています。









