
ディーゼル車を水素で走らせる仕組み
米MIT発のスタートアップ、LNK Energiesは、液体有機水素キャリア(LOHC)を使い、既存の大型ディーゼルトラックを水素で走る車両に改造する技術を開発しています。水素を高圧タンクに詰めず、液体に結び付けて運び、車上で取り出す方式です。
LOHCは水素を化学的に結び付けて貯蔵し、必要なときに放出できる液体です。LNKは水素を取り出す装置を「ミニ冷蔵庫ほど」の大きさに小型化したと説明しています。同社によると、従来のLOHC用反応器は輸送コンテナほど大きく、トラックへの搭載が難しいものでした。
取り出した水素は、既存の内燃機関で燃やすか、燃料電池で電気に変えてモーターを動かします。内燃機関を使う場合は数カ所を改造し、エンジンの排熱を水素放出装置の稼働に利用する計画です。
高圧タンクと給油網をめぐる違い
トラック上で水素を圧縮して貯蔵する場合、圧力は800バールを超えます。LNKの方式では水素を液体の状態で運び、必要な分だけ車上で取り出すため、圧縮工程を省けるとCEOのサヤンディープ・ビスワス氏は述べています。
LNKはLOHCを従来型の燃料タンクに入れ、ディーゼルと同じようにポンプで給油する構想です。同社は既存のディーゼルスタンドを利用でき、水素専用の給油網を新たに整える必要がないと説明しています。
千代田化工建設が扱うMCH(水素を化学的に結び付けたメチルシクロヘキサン)も、常温・常圧で液体として取り扱えます。千代田化工建設は、MCHが水素ガスに比べて体積当たり530倍の水素を含み、タンカーや従来の石油貯蔵タンクを利用できるとしています。
液体キャリアの輸送と水素放出
千代田化工建設の方式では、供給地で水素とトルエンからMCHをつくり、需要地で脱水素触媒を使って水素を取り出します。取り出す工程で回収したトルエンは供給地へ戻し、再びMCHをつくる原料として循環させます。
LNKも、水素をLOHCに結び付けて運び、搭載した装置で必要に応じて放出する仕組みを掲げています。同社によると、放出後の液体はタンクに戻ります。
千代田化工建設のMCH循環システムとLNKのトラック搭載方式は、それぞれ別の技術です。
実証段階とコスト見通し
LNKが動作を確認した試作反応器は、芝刈り機のエンジンを動かせる段階です。同社は今後18カ月以内に、より大きな装置を商用トラックへ搭載する計画を示しています。
トラックの初期費用はディーゼル車より高くなる見込みです。一方、LNKの共同創業者らは、50〜100台を製造した段階で、水素燃料を1ガロン当たり6.50ドルとした場合にも、ディーゼルより運用費を抑えられると予測しています。同社CTOのアレクシス・フイン氏は、クラス8のトラックの総保有コストがディーゼル車より13%低いとの試算を示しました。これらの見通しに政府補助金は含まれていません。
水素を内燃機関で燃やす場合、窒素酸化物(NOx)が発生する可能性があります。米エネルギー省は、高温で空気中の窒素と酸素が反応してNOxが生じ、水素の燃焼でも排出され得ると説明しています。
LNKは10月13〜15日にサンフランシスコで開かれるTechCrunch Disruptのスタートアップ競技会で、ステージ上の発表を予定しています。










