
フランス向けサービスを11月24日に終了
スイスの非営利団体Quad9は、2026年11月24日からフランス国内の利用者に無料のDNSサービスを提供しない方針です。パリの裁判所が、スポーツ中継の海賊版配信に関係するドメイン名のブロッキングを命じ、従わない場合の制裁金を定めたことを受けた決定です。これにより、フランスの利用者はQuad9のセキュリティ保護サービスを利用できなくなります。
裁判所は、対象ドメイン名をブロックするよう命じ、措置が終わる11月14日まで、従わない場合は1日あたり合計1,000ユーロ(約18万円)の制裁金を科すとしました。beIN Sportsが求めていたのは1日最大58万ユーロ(約1億円)でしたが、裁判所が定めた額は1日あたり1,000ユーロ(約18万円)です。Quad9は、期間中の制裁金を合計2万4,000ユーロ(約420万円)と見積もっており、弁護費用は含まれません。
対象は当初の命令から拡大し、58のドメイン名になりました。裁判所はQuad9に、対象名をブロックするための合理的な努力を求めましたが、Quad9はこれまで一つもブロックしていません。Quad9は控訴を続ける方針です。
DNSブロッキングがアクセスに作用する仕組み
DNS(ドメインネームシステム)は、ウェブサイトのドメイン名を、通信先を示すIPアドレスに対応させる仕組みです。利用者がブラウザーにドメイン名を入力すると、端末はDNSリゾルバーに問い合わせます。リゾルバーはキャッシュを調べるか、ほかのDNSサーバーへ問い合わせてIPアドレスを返し、端末はそのアドレスのサーバーに接続します。
再帰DNSリゾルバーは、利用者からの問い合わせを受け、必要に応じて別のDNSサーバーをたどって回答を返します。特定のドメイン名をブロックする場合、リゾルバーは通常の変換を止めたり、応答を変えたりして、そのドメインを使った接続を妨げます。DNS段階で接続を止める仕組みは、悪意あるサイトやフィッシングサイトへのアクセスを防ぐ用途にも使われます。
この方式で制限されるのは、ブロックを実施するDNS経路を使ったアクセスです。別のDNSリゾルバーに切り替えたり、VPNを利用したりすると、ブロッキングを回避できる場合があります。DNSブロッキングは対象コンテンツ自体を削除せず、一般的な接続経路からのアクセスを妨げます。
Quad9が地域限定の対応を難しいとする理由
Quad9は、無料サービスの利用に登録や本人確認を求めず、利用者を国・地域ごとに識別する名簿も持っていないと説明しています。そのため、フランス国内の利用者だけに対象ドメインのブロッキングを適用するのは困難だという立場です。同団体は、利用者のプライバシー保護とDNS応答の正確さをサービスの原則に挙げています。
Quad9は、対象ドメインを全世界でブロックすれば裁判所の要件を満たせる一方、フランスの判断を世界中の利用者に適用することになるとして、その方法も採らない方針です。同団体の保護サービスでは、マルウェアなど悪意ある活動に関係するドメインを世界共通のリストでブロックしており、全世界向けに適用するには対象名をそのリストに加える必要があります。Quad9は、特定国の裁判所命令を世界共通のブロックに反映することは受け入れられないとしています。
またQuad9は、フランスで約20件のブロッキング訴訟が係属しており、今後さらに制裁金が課される可能性を撤退判断の理由に挙げています。同団体は、今回の制裁金だけでなく、ほかの訴訟で累積する負担がサービスの継続を脅かすと述べています。beIN Sportsが1日最大58万ユーロ(約1億円)を求めた経緯はで扱いました。
OpenDNSも2024年にフランスで提供を停止
フランスでは、公共DNSサービスの停止はQuad9が初めてではありません。2024年5月30日、パリ司法裁判所はCanal+がGoogle、Cisco、Cloudflareに対して起こした訴訟の判決を出しました。Canal+側は、トップ14ラグビーの試合日に合わせ、海賊版中継サイトにつながる27のドメイン名などをフランス国内でブロックするよう求めていました。
Ciscoは、フランスのスポーツ法に基づく裁判所命令を受け、2024年6月28日からOpenDNSをフランスおよび一部のフランス領地域で利用できない状態にしました。TorrentFreakは、OpenDNSがCanal+のブロッキング命令を受けてフランスでのサービスを停止したと報じています。










