Curcuma longa roots
写真: Simon A. Eugster / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons

5種の化合物が細胞のエネルギー産生に影響

ヴロツワフ医科大学などの研究チームは、クルクミン、ベルベリン、ビオカニンA、ククルビタシンE、プロポリス成分のCAPEを線維肉腫細胞と健康な筋肉細胞に作用させました。5種すべてで、がん細胞のエネルギー産生が妨げられ、細胞分裂を続けられなくなる変化が見られました。

研究チームは、炎症や代謝、細胞の生存などに関わるNF-κBシグナル経路と、細胞のエネルギーを作るミトコンドリアに注目しました。線維肉腫細胞ではATP量が約83〜92%減少し、筋肉細胞では約23〜73%減少しました。

5種はいずれも、線維肉腫細胞を「細胞老化」と呼ばれる状態に移行させました。細胞老化では、細胞は生きたまま恒久的に分裂できなくなります。クルクミンでは該当する細胞の割合が約16.5%から75%超に上昇し、ほかの4種でも66%を超えました。

クルクミンは細胞実験で作用と安全性のバランス

細胞の生存率を調べた試験では、クルクミンとCAPEが線維肉腫細胞に比較的選択的に作用しました。研究チームは、クルクミンが細胞老化を促す作用と比較的良好な安全性の両方を示し、試験した5種の中で全体のバランスが最も良いと評価しました。

研究チームは、より初期段階の毒性評価として、ハチノスツヅリガの幼虫でも各物質を調べました。クルクミンとベルベリンは比較的よく耐えられた一方、CAPEとククルビタシンEでは死亡率が高く、ビオカニンAは5種の中で最も毒性が強い結果でした。

ベルベリンも幼虫試験では比較的よく耐えられましたが、健康な筋肉細胞のミトコンドリアに及ぼす作用は、さらに詳しく調べる必要があると研究チームは述べています。候補物質の評価では、がん細胞への作用の強さに加え、健康な細胞や個体への影響も考慮されます。

肉腫の治療は組織型や病状に応じて異なる

骨や筋肉、脂肪などに発生する肉腫は、組織型によって性質や治療の考え方が異なります。骨や軟部組織の悪性腫瘍を肉腫と呼び、軟部肉腫には多様な組織型があります(がん治療.com)。

国立がん研究センター希少がんセンターによると、成人の肉腫ではドキソルビシンを含む薬物療法が標準的な選択肢です。薬剤を複数併用すると腫瘍を小さくする効果は高まる一方、毒性も強くなり、生存期間を延ばす効果は示されていないため、同センターはドキソルビシン単剤を標準的な治療としています。

一方、骨肉腫やユーイング肉腫など、薬物療法の効果が期待される肉腫では、手術や放射線治療と組み合わせる集学的治療が用いられます。線維肉腫細胞を使った今回の実験で見られた作用は患者の治療効果を示すものではなく、肉腫の治療方針を直接置き換えるものでもありません。

経口摂取での吸収と腫瘍への到達は別の課題

クルクミンのレビューでは、通常の結晶性クルクミンは経口バイオアベイラビリティ(摂取後に体内で利用される割合)が低く、血清中濃度は通常1%未満とされています。水に溶けにくく、代謝も速いため、腫瘍で作用に関係する濃度に達しにくいことが臨床応用上の課題として挙げられています。

レビューでは、ナノ粒子などの運搬技術が、クルクミンの溶解性や放出の制御、腫瘍への集積を改善する方法として研究されています。経口製剤CUMINUP60は、健康な人を対象にした試験で、標準的な結晶性クルクミンと比べ、血漿中濃度の時間推移を反映するAUCが178倍になったと報告されています。

ただし、この吸収率の改善は、今回の線維肉腫細胞で見られた作用が人の腫瘍内で再現されることを示すものではありません。レビューでは、動物実験などの成果から臨床応用に至る隔たりや、腫瘍ごとに異なるナノ粒子の集積、製造と長期安全性が課題として挙げられています。

次段階は動物モデルでの検証

今回の研究は、培養した動物由来の細胞株と、比較的単純な無脊椎動物の毒性モデルを用いた実験です。研究チームは、これらの結果だけではクルクミンやほかの化合物を肉腫治療に使えるとは結論できないとしています。

次の段階として、研究チームは、より高度な生体内モデルでの評価に加え、作用の仕組み、適切な投与量、届け方を調べる予定です。