
修復された「二人兄弟のトンド」もローマへ
エジプトは、ファイユームのミイラ肖像画の主要なコレクションをローマの展覧会に貸し出します。国外での展示は初めてで、展覧会は2026年11月から2027年5月まで開かれる予定です。
出展作の一つ「二人兄弟のトンド」は、修復を終え、カイロのエジプト博物館で公開されました。エジプト博物館の保存修復担当者とローマの専門家が3週間かけて作業したと、当局者が説明しています。
展覧会の主催者、モンドモストレのトマソ・ラダエッリ会長によると、会場には彩色木板の肖像画のほか、葬送用の布や仮面、大理石の肖像、石膏像、古代の装身具など110点を超える品が集まります。
木板の損傷と蝋画面に配慮した修復
「二人兄弟のトンド」は2世紀の作品で、円形の画面に2人を描いています。木製の支持体はシロアリによる損傷を受け、絵の表面も脆かったため、慎重な修復が必要でした。
この肖像画には、溶かした蝋に顔料を混ぜる技法が使われています。修復によって右側の人物の顔立ちを回復できたとされます。損傷した木板と絵の層を保ちながら、図像の見え方も整えました。
エジプト博物館のアリ・アブデル・ハリム館長は、木製の支持体と彩色面がともに脆弱だったと説明しています。作品の状態に応じた保存処置が、今回の国外貸出を支える前提になりました。
「蝋画」の分類は見た目だけでは決まらない
ファイユーム肖像画は、薄い木板に描かれ、ミイラの包帯の中で故人の顔に重ねられた作品群です。エジプトの葬送習俗と、広い地中海世界におけるギリシャ・ローマ美術の影響が交わっています。
ケン・サザーランド、レイチェル・サビノ、フェデリカ・ポッツィは、肖像画をテンペラと蝋画に分ける従来の分類が、かつては主に表面の見た目や絵具の扱い方に基づいていたと論じています。シカゴ美術館所蔵の2点を調べたところ、見た目の異なる両作品から蜜蝋が検出されました。
一方の作品には、厚く盛り上がった絵具や道具の跡があり、加熱した蝋を使うエンカウスティーク技法の特徴が見られました。もう一方は平坦でつや消しに見え、テンペラと結びつけられてきた細い線描がありますが、分析ではこちらからも蜜蝋が見つかっています。
分析が示す材料の複雑さ
リン・ロサ・スパーベックとジョイ・マズレクは、デンマーク国立博物館とニュー・カールスバーグ美術館の肖像画11点を、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)で調べました。対象には、エンカウスティークと分類された作品10点と、テンペラと分類された作品1点が含まれます。
分析では、エンカウスティークの10点すべてから蜜蝋が確認されました。一方、一部の試料からは酸化した油、動物性の接着剤、由来を特定できないタンパク質が見つかり、表面のコーティングから卵由来の成分やパラフィンが検出された例もあります。
この結果は、蝋を使う技法でも材料構成が一様とは限らないことを示しています。ただし、分析対象はデンマークの所蔵品で、「二人兄弟のトンド」の材料を直接調べたものではありません。この肖像画には溶かした蝋と顔料を使う技法が用いられており、修復では作品自体の脆い状態への対応が必要でした。










