
血液中の67種類の代謝物と死亡リスク
地中海食に関連する血中代謝物のパターンは、スペインと米国の計14,584人を対象にした分析で、追跡期間中の死亡リスクの低さと関連しました。スコアが最も高いグループは、最も低いグループに比べ、両集団で死亡リスクが23%低い結果でした。
対象は、スペインの食事介入試験PREDIMEDに参加した1,880人と、米国の長期研究3件に参加した12,704人です。スペインの参加者は約13年間、米国の参加者は平均25年間追跡されました。
このスコアは、血液中の主に脂質など67種類の代謝物を組み合わせたものです。代謝物は、食べ物を体が処理する過程で生じたり変化したりする小さな分子で、食事内容や個人ごとの代謝反応を反映することがあります。
食事記録を補う指標として開発
2020年の研究では、スペインのPREDIMED参加者1,859人を主な対象とし、米国の看護師・医療従事者の研究に参加した6,868人を検証対象としました。研究チームは、食事への適合度と血漿中の代謝物を照らし合わせ、67種類からなる代謝シグネチャーを特定しました。
スペインでは14項目の地中海食適合度質問票を使い、米国では食物摂取頻度質問票で食事を評価しました。血漿中の代謝物は、液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法で測定しました。このシグネチャーと食事スコアの相関は、スペインと米国の両方で確認されました。
従来の食事評価では、何を食べたかを本人が思い出して回答する質問票が中心です。血液中のパターンを使う方法は、記憶や自己申告に頼る評価を補い、食事の摂取量だけでなく、体が食事を吸収・処理する際の違いも捉える可能性があります。
23%の差は観察された関連
スペインの分析では、年齢、喫煙、体格指数、既往症などを考慮した後も、スコア上位3分の1の死亡リスクは下位3分の1より23%低い結果でした。米国の分析でも、上位5分の1は下位5分の1より23%低く、同様の関連が見られました。
スペインでは、自己申告による地中海食の実践度を考慮しても、関連はほぼ保たれました。一方、この分析は参加者の既存スコアと、その後に起きたことを比べた観察研究です。スコアを高めれば寿命が延びることを示したものではありません。
スコアの開始時点の値と1年後の値、それらの平均は死亡リスクとの関連を示しましたが、介入開始から1年間のスコアの変化は関連しませんでした。研究者らは、このパターンが短期間の食事変更よりも、長期的な食習慣や代謝状態を捉えている可能性を挙げています。
PREDIMEDの食事介入と過去の結果
PREDIMED試験では、心血管疾患の既往がなくリスクが高い7,447人を、エクストラバージンオリーブオイルを補う地中海食群、ナッツを補う地中海食群、脂肪を減らす助言を受ける対照群に割り当てました。追跡期間中央値は4.8年で、心筋梗塞、脳卒中、心血管疾患による死亡を主要評価項目としました。
修正後の解析では、対照群と比べ、オリーブオイル群とナッツ群で主要な心血管イベントの発生割合が低い結果でした。これは血中スコアの分析とは別に、食事介入と心血管イベントを評価した試験です。
PREDIMEDの研究を整理した2014年のレビューでは、4.8年間に7,447人中288件の主要心血管イベントが報告されました。糖尿病のない3,541人を対象にした解析では、地中海食とオリーブオイルの群で糖尿病発症リスクの低下が見られましたが、ナッツ群では統計的に明確な低下は示されませんでした。1年後のメタボリックシンドローム有病率は、ナッツ群で13.7%、オリーブオイル群で6.7%、対照群で2.0%低下しました。
大規模研究で報告された食事との関連
2008年のメタ分析は、計1,574,299人を含む12件の研究を対象にしました。そのうち全死亡を評価した8集団、514,816人の分析では、地中海食の適合度スコアが2点高いことは、全死亡リスクの9%低下と関連しました。心血管死亡についても9%の低下との関連が報告されました。
2024年に公表された高齢者対象のメタ分析には、26件の観察研究と2件の無作為化試験、計679,259人が含まれました。地中海食への適合度が高いことは、全死亡リスク23%低下、心血管死亡リスク27%低下と関連しました。非致死性の心血管イベントは23%低下との推定でしたが、信頼区間にはリスク差がない範囲も含まれていました。
この血中スコアは、食事と死亡リスクの関連を評価する研究上の指標であり、個人の余命を示すものではありません。日常診療で使う検査にするには、年齢や健康状態の異なる集団で検証し、既存のリスク要因に加えて予測精度を高めるか評価する必要があります。








