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実験薬シナシグアトを2週間投与した老齢ラットで、血中のアミロイドβの一種が半減し、若いラットと同程度になりました。肝臓の血管細胞と肝細胞の連携を回復させる結果も得られましたが、脳の病変や記憶、アルツハイマー病の発症への効果は調べられていません。

2週間の投与で血中アミロイドβが半減

研究チームは、血液中の物質を処理する肝臓の働きが加齢で低下する点に着目しました。アミロイドβはアルツハイマー病の脳に蓄積するタンパク質断片で、血液中にも存在し、肝臓がその除去に関わります。

実験では、2歳のラットにシナシグアトを毎日2週間投与し、未投与の老齢ラットおよび生後4カ月の若いラットと比較しました。シナシグアトは、肝臓の細い血管を覆う細胞にある微小な開口部を回復させました。

投与後、血中のアミロイドβ40は半分に減り、若いラットと同程度になりました。LDLと呼ばれるコレステロールを運ぶ粒子も低下しましたが、これらの結果はラットでの実験であり、人で同じ効果が得られることを示すものではありません。

血管の開口部と肝細胞への取り込み

肝臓では、血管を覆う細胞の微小な開口部を通った物質が、肝臓の主な働き手である肝細胞に届きます。大型の粒子はこの通路を必要とし、加齢したラットでは開口部が小さく、数も少なくなっていました。

アミロイドβの多くは、脂肪を運ぶ粒子に結びついて血液中を移動します。研究チームは、開口部を広げれば肝細胞が血中からアミロイドβを取り込みやすくなると考え、シナシグアト投与後の変化を調べました。

一方、LDLは開口部が失われても通過できるほど小さいため、開口部の回復だけではLDL低下を説明できません。研究チームは、血管を覆う細胞から肝細胞への信号にも変化があるかを、細胞培養実験で検討しました。

HB-EGFが肝細胞の働きを支える可能性

若いラットの血管細胞を培養した液体を肝細胞に加えると、LDLの取り込みが促されました。老齢ラットの細胞から得た液体では促進が見られませんでしたが、シナシグアトを投与された老齢ラットの細胞の液体では、取り込みが回復しました。

研究チームが調べた成長因子HB-EGFは、細胞の働きに影響するタンパク質です。老齢ラットの血管細胞はHB-EGFの前駆体を作っていましたが、可溶性の信号を検出できる量だけ放出しておらず、シナシグアト投与後にはその放出が回復しました。

HB-EGFを肝細胞に直接加えると、LDLとアミロイドβの取り込みが改善しました。また、若い血管細胞の培養液による効果はHB-EGFを阻害すると失われました。取り込みに関わる2種類のタンパク質は老齢細胞でも総量に大きな差がありませんでしたが、細胞表面で働く量は減っており、投与後に回復しました。

臨床試験で調べられた作用と研究の範囲

シナシグアトは、一酸化窒素に依存せず可溶性グアニル酸シクラーゼを活性化する薬です。2008年の健康な男性ボランティア76人を対象とした無作為化比較試験では、薬を50〜250マイクログラム毎時で最大4時間、静脈内投与しました。

この試験では重篤な有害事象は報告されませんでした。4時間の投与では拡張期血圧の低下と心拍数の上昇が見られ、高用量では平均動脈圧も低下しました。これは短時間の投与を調べた結果で、老齢ラットへの連日投与とは条件が異なります。

ラット研究が扱ったのは健康な加齢であり、治療による脳のアミロイド斑の減少、記憶の改善、アルツハイマー病の予防は確認していません。研究チームは次の段階としてアルツハイマー病モデル動物での検証を挙げており、人への治療に向けては関連薬の有効性と安全性の研究も必要です。