
酪農学園大学と自然電力が北海道江別市で行った実証では、垂直式太陽光パネルの両側で牧草の収量と栄養価に大きな差は見られませんでした。発電量は年度によって目標に届かず、農業機械の動線を踏まえた設備配置も課題となりました。
牧草の収量と栄養価は両側でほぼ同じ
実証設備は大学構内の約1.2ヘクタールの圃場に設置されました。高さ4メートル、幅40メートルの枠を8〜10メートル間隔で平行に4列並べ、下部は地面から約1.4メートルの位置に設けています。パネルは両面受光型で、表裏の両面で光を受けて発電します。
2024年度はチモシーなどの牧草を栽培し、日なた側の年間乾物収量は1ヘクタール当たり9,337キロ、日陰側は9,726キロでした。統計処理では両側にほぼ差がなく、栄養価も同程度でした。
2025年度に栽培した飼料用トウモロコシは、10アール当たりの乾物収量が日なた側1,884キロ、日陰側1,500キロでした。7月時点の高さも日なた側178.6センチ、日陰側127.3センチで、収量は日陰側が少なかった一方、成長速度は平均並みとされました。
発電量は年度ごとに目標との差
発電量の年間目標は8万5,000キロワット時です。2024年度は8万500キロワット時で目標の95%、2025年度は7万4,500キロワット時で88%となり、後者は想定より日照量が少なかったため目標を下回りました。
設備は2023年12月に運転を始め、2年間の試験結果がまとめられました。日陰側でも地面や積雪面からの反射光を受ける構造です。江別の実証で反射光が発電量に与えた効果は、牧草の調査結果とは別に数値で報告されています。
圃場では、パネル設備の配置と農作業機械の関係も調べられました。実験を統括した吉岡徹教授は、使用する農機の作業幅と走行経路に合わせて配置を最適化すれば、発電と農作業を両立できるとの見方を示しました。
両面受光パネルは雪面の反射光も利用
両面受光型パネルは、表面だけでなく裏面に届く光も発電に使います。垂直に設置するとパネル面に雪が積もりにくく、雪面で反射した光が裏面にも届きます。
新潟県長岡市で積雪深が1メートルを超える地域を対象にした別の実験では、垂直式の両面受光システムを2冬季にわたり調査し、積雪による破損は確認されませんでした。積雪時には、雪面からの反射光を主因として、水平面全天日射量に対する発電比が55%上昇しました。
一方、雪による部分的な影で発電比が17%低下し、反射光による増加分の一部を相殺しました。この結果は長岡市の別設備で得られたもので、江別の実証で同じ増減があったことを示すものではありません。
農地利用と一時転用の要件
傾斜式の営農型設備は農地の上空にパネルを設けますが、垂直式はパネルを地面に立てる方式です。酪農学園大学の実証では、列の間を8〜10メートル空け、大型農業機械の通行を考慮して配置しました。
垂直式の両面受光設備は朝夕に発電の山ができる特性があり、日中に発電が集中する傾斜式とは時間帯が異なります。積雪地域ではパネル面に雪が堆積しにくく、雪面からの反射光も受けられるため、冬季の発電に活用できる設計です。
農地に発電設備を設置する営農型太陽光発電では、一時転用許可を受け、営農を続けながら発電します。農林水産省の令和6年4月改訂資料では、許可に際して営農の継続や作物の品質、日照量を確保する設計、農業機械を効率的に使える高さなどを確認事項に挙げています。
許可を受けた事業者には、毎年の栽培実績と収支の報告が求められ、報告を通じて農作物の生産に支障がないか確認されます。









