ウィーンで自律安定化型の試作機が稼働
ウィーン工科大学(TU Wien)とドイツ物理工学研究所(PTB)の研究チームが、トリウム原子核を使う時計の試作機を開発しました。核時計が従来の原子時計のようにレーザー周波数を自ら安定させ、外部からの介入なしに24時間以上動作することを示しました。
核時計は、原子核のエネルギー状態の変化を時間の基準に使う時計です。研究チームは、自律安定化機能を備えた核時計を初めて実証したとしています。
TU WienのThorsten Schumm教授らは、核時計の精度をさらに高めるため、より強いレーザーや改良したトリウム結晶を使う方針を示しています。
レーザーをトリウム核の反応で安定化
試作機の中心には、トリウム原子を含む結晶があります。レーザーを結晶に照射し、レーザー光の振動を時計の刻みとして利用します。
レーザーの周波数は、温度変化などによってわずかにずれることがあります。トリウム核は周波数が適切なときにレーザー光を吸収し、周波数が最適値から外れると吸収量が減るため、その変化を手がかりにレーザーを自動調整します。
一般的な原子時計では、原子の電子のエネルギー状態を使ってレーザーなどの周波数を安定させます。今回の方式では電子の代わりに原子核を使い、従来の原子時計に必ずしも頼らず動作する構成を実現しました。
精度は約10のマイナス15乗
研究チームが1日かけて調べた試作機の精度は約10のマイナス15乗で、時間のずれに換算すると約3000万年に1秒です。
TU Wienによると、原子核は原子より1万倍以上小さく、外部からの影響を受けにくいため、原理上は原子より安定した時計の基準になり得ます。ただし、今回の試作機の精度は世界最高水準の光原子時計には届いていません。
同じ時期に、中国の研究グループも核時計の構築を発表しました。TU WienとPTBの研究チームは、核時計の周波数を自ら安定させる機能も実証したとしています。
結晶材料の研究と将来の測定
核時計に使うトリウム229は希少で放射性を持ち、従来の高濃度結晶の成長や取り扱いが課題とされています。別の研究チームは、物理蒸着法でトリウム229を数マイクログラム使ったフッ化トリウムの薄膜を作製し、核遷移を観測しました。
この研究で作られた直径50マイクロメートルの薄膜試料は、一般的なトリウム添加結晶に比べて放射能が最大で3桁小さいと報告されています。薄膜は光学部品や微細加工技術との統合に適合し得るとされ、将来の固体核時計に向けた材料の選択肢を示しています。
核時計の応用として、CERNは、時間とともに変化する自然の基本定数や、超軽量暗黒物質を調べる用途を挙げています。CERNの研究チームは2023年、トリウム229の励起状態がフッ化マグネシウム結晶内で16.1分続くと測定し、この寿命は固体核時計の精度を予測するために必要だと説明しました。
TU Wienは、今回の技術が物理量をこれまでにない精度で測ることにつながる可能性があるとしています。試作機の精度向上に向け、研究チームはレーザーと結晶を改良する計画です。









