
スコットランド西部のリズモア島で、地元住民が参加した発掘調査により、初期中世の墓地や建物、金属加工の跡が見つかりました。研究チームは、聖モ・ルオクが6世紀に創設したと伝わる修道院「リオス・モール」が、当時のキリスト教ネットワークで重要な役割を担った拠点だったと位置づけています。
地元の歴史協会が調査を開始
リオス・モールは、リズモア島にあった修道院です。聖モ・ルオクの創設を伝える記録や地域の伝承は残っていましたが、考古学的な証拠は限られていました。
リズモア歴史協会は2016年、修道院の所在を調べる活動を始めました。発掘は地元住民の資金集めやボランティア参加を基盤とし、考古学者のクレア・エリス氏が率いました。
調査地は、13世紀に建てられた大聖堂の近くです。研究チームは、その大聖堂の場所がモ・ルオクの修道院跡と重なるのか、また集落の規模や性格を明らかにできるのかを調べました。
墓地と建物が示す修道院の広がり
発掘では、少なくとも6人分の埋葬を含む中世の墓地が見つかりました。遺骨の放射性炭素年代測定は、西暦650年から1040年の範囲を示しています。
研究者は、初期中世の十字架の石板の一部や、彫刻された十字架の破片も発見しました。こうした遺物は、墓地や建物の痕跡とともに、教会活動が営まれた場所の特徴を伝えます。
別の区域では、石灰岩を敷いた楕円形の建物跡が確認されました。建物は7世紀から10世紀のものとされ、手作りの土器、加工した火打ち石、動物の角などが出土しました。
金属加工の痕跡と他の修道院との比較
金属加工の区域からは、金、銅、銀の溶解や鋳造に使われたとされる鋳型やるつぼなど、1,000点を超える破片が見つかりました。ゴードン・ノーブル氏は、同時代の宗教施設と世俗の遺跡を含めても、大規模な金属加工資料の一つだと説明しています。
スコットランド北東部のポートマホマック修道院でも、るつぼや鋳型が見つかり、金属の塊、指輪、ピン、ブローチなどの製作が想定されています。金と銀を分ける加熱用の皿も出土しており、貴金属を扱う工程の手がかりになっています。
同遺跡では、ガラス加工や革加工、木工の痕跡も報告されています。これらはリズモア島の発掘成果そのものではありませんが、修道院の作業場で見つかる道具や加工くずから、金属製品の製作を含む複数の工芸活動を調べられることを示しています。
ダル・リアタのキリスト教ネットワーク
研究論文は、リオス・モールを、初期中世のスコットランド北西部における上位の教会拠点と評価しています。また、アーガイルやヘブリディーズ諸島などを含むダル・リアタのキリスト教ネットワークで、同修道院が重要な位置を占めたと論じています。
同じネットワークには、563年ごろにコルンバが創設したアイオナ修道院もありました。研究論文は、6世紀から8世紀初頭のダル・リアタが、宗教・文化面、時には政治面でも影響力を持ち、アイルランドやイングランド北部にも影響が及んだと説明しています。
ノーブル氏は、発掘成果からリズモアの修道院が、よく知られた初期中世の修道院に比肩する重要性を持った可能性を指摘しました。研究チームは今後、修道院の外周を形作った可能性のある囲いの調査も続ける予定です。







