
世界の耕地の42%で採算が取れるとの推計
ロボットやドローン、AIなどを使うスマート農業は、世界の耕地の42%ですでに採算が取れているとの国際研究が発表されました。今後20年で50%に増え、各国が環境規制を強化した場合は75%に達する可能性がある一方、規制を緩めた場合は31%になるとの推計です。
この研究は、スマート農業の世界的な採算性を初めて推計しました。ボン大学を中心に、チューリヒ工科大学とカリフォルニア大学バークレー校も参加し、成果は米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載されました。
研究チームは、専門家8,000人超への照会と科学文献の調査を通じて、スマート灌漑、除草ロボット、ドローン分析などが使われている4,000カ所超を整理しました。さらに機械学習で導入を後押しする条件を分析し、地域ごとの経済発展の予測もモデルに加えました。
採算性は地域の条件で異なる
採算性が高い地域には、西欧、カナダ、米国、オーストラリアなどが挙げられました。所得や教育の水準、圃場の規模、環境規制の厳しさが高い地域ほど、導入が進む傾向が示されました。
肥料や農薬を必要な場所に絞って使うと投入量を抑えられ、人件費が高い地域では機械やロボットの活用が経済面で利点になると、研究チームは分析しています。環境ガバナンスの強さは、モデル上で導入を予測する最も重要な要因でした。
一方、サハラ以南のアフリカでは、現在の技術が小規模農業に合いにくいことなどから、導入の可能性は限られています。研究チームは、北米や欧州の大規模農場を主な対象としてきた技術開発に加え、小規模農家にも適した解決策の研究が必要だと述べています。
小規模農家向けには現場で学べるセンサーも
国連開発計画(UNDP)の報告書は、携帯電話、衛星、無人航空機、センサーやIoTを、小規模農家向けの精密農業技術として整理しています。携帯電話は、農家と専門家の双方向の連絡や現場データの収集に使える技術として挙げられています。
サハラ以南のアフリカの小規模灌漑農家を対象にした研究では、土壌水分センサー「カメレオン」と、土壌の水分前線を調べる「FullStop」が紹介されました。両ツールは土壌中の水分、硝酸塩、塩分の状態を色で示し、農家が圃場で観察しながら学ぶ仕組みの基礎になります。
研究では、農家が短期間でツールの使い方を学び、管理方法を変えたと報告されています。また、この学習システムの導入費用は、灌漑設備の新設や改修費用のごく一部になるとされています。UNDPの報告書は、デジタル技術の価格低下などを背景に、小規模農家向けの技術が手頃で利用しやすくなっていると述べています。
効果の平均値と現場でのばらつき
精密農業技術の効果を85研究、農場観測1,472件から分析したメタ分析では、平均投資収益率が22.3%、純利益が18.5%増加したと報告されました。環境面では、窒素利用効率が平均15.1%上がり、農薬使用量は12.8%、温室効果ガス排出量は9.4%減少しました。
同分析では、技術の種類、農場の規模、地域、発展段階によって効果に差がありました。可変施肥技術や自動操舵の効果は大規模な穀物農場で目立ち、小規模農場や開発途上国では相対的に弱く、安定性も低いと報告されています。
環境面の現地試験をまとめた別のレビューでは、精密農業と持続可能性を扱う論文444本を調べ、現地試験またはモデルによる証拠がある54本を特定しました。そのうち45本は、肥料や農薬、水の使用量、土壌の質、温室効果ガス排出など、少なくとも一つの環境面で利点を示しました。
同レビューで証拠が最も多かったのは、穀物栽培における可変施肥技術でした。慣行的な一律施肥や比較対象に比べ、肥料使用量が減っていました。一方、現地試験54本のうち9本では、レビューが対象とした環境面の利点を示す証拠が得られませんでした。









