Delta Air Lines B767-3P6-ER N1501P EDDS 2011
写真: Julian Herzog ( Website ) / CC BY 4.0 / Wikimedia Commons

デルタ航空がStarlinkを見送った理由

デルタ航空のエド・バスティアンCEOは、社内イベントでStarlinkを採用しない理由について「イーロン・マスク氏とは組みたくない」と述べたと報じられました。 StarlinkはSpaceXが提供する衛星インターネットサービスで、航空機では機内Wi-Fiに利用されます。

この報道が伝えるのは、採用判断にマスク氏への懸念が関わったという点です。デルタ航空は以前、機体でStarlinkを試験していると伝えられていました。

航空会社にとって機内Wi-Fiは、乗客が飛行中にネットへ接続するためのサービスです。Starlinkを採用するかどうかは、通信方式や速度だけでなく、航空会社がどのサービス事業者と組むかという判断にも関わります。

Starlinkは低軌道衛星と機内アンテナを使う

Starlinkは地球の低軌道を周回する多数の衛星を使って通信します。航空機には機体上部に平面アンテナを設置し、機内の電源装置や無線アクセスポイントなどと接続して、乗客向けのWi-Fiを提供します。

衛星との通信は、機体が地上走行中、離陸時、巡航中、着陸時にも利用でき、陸上と海上の飛行に対応するとされています。 ただし、利用可能な範囲は世界全域ではありません。

航空機向け機器の構成には、アンテナに当たるAero Terminal、電源装置、無線アクセスポイントが含まれます。 機体への設置には認証や機内設備の作業が伴い、作業時間は機体の大きさや内装の状況によって異なります。

速度と遅延に表れる衛星方式の違い

Ooklaが2025年第1四半期のSpeedtestデータを集計したところ、機内接続サービス事業者別のStarlink中央値は、下り152.37Mbps、上り24.16Mbps、複数サーバーへの遅延44ミリ秒でした。 これは同社が分析した利用者の通信測定値です。

同じ集計で、地球静止軌道衛星を使う事業者の遅延は667〜839ミリ秒の範囲でした。 低軌道衛星は地上からの距離が短く、Ooklaの分析ではStarlinkの速度と遅延に表れる特徴につながっています。

デルタ航空は同じ集計の事業者一覧でViasatを利用する航空会社に含まれています。 Viasatは静止軌道衛星のネットワークを運用しており、事業者別の下り速度中央値は50.38Mbpsでした。 この値はViasatの測定結果で、デルタ航空単独の通信速度を示すものではありません。

航空会社ごとに異なる導入状況

Ooklaの集計では、Starlinkを利用する航空会社としてハワイアン航空とカタール航空が挙げられています。 同社の測定データでは、この2社の機内Wi-Fiは他の航空会社より下り・上り速度と遅延の面で良好でした。

機内Wi-Fiは航空会社によって単一の方式に限らず、飛行する機体や路線に応じて異なる接続事業者が使われる場合があります。 Ooklaの事業者別集計には、衛星の軌道や地上通信網が異なる複数のサービスが含まれています。

今回の報道では、デルタ航空の採用見送りをめぐってCEOのマスク氏への言及が焦点となりました。一方、機内Wi-Fiの実績には事業者や通信方式による差があり、Starlinkは低軌道衛星を使うサービスとして航空会社の選択肢に加わっています。