
イーロン・マスク氏は、脳と機器をつなぐNeuralinkの次の製品「Blindsight」について、技術面の準備が整い、規制当局の承認を待っていると述べました。完全に失明した人や、生まれてから一度も見たことがない人にも視覚をもたらすと主張していますが、これはマスク氏が示した見通しです。
Blindsightが目指す人工的な視覚経路
視覚補助の埋め込み機器には、カメラで捉えた映像を電気信号に変え、目の網膜へ送る方式があります。網膜インプラントは、光を感じる細胞が損傷していても、網膜内の別の細胞が保たれていることを候補条件とします。
これに対し、皮質インプラントは脳の視覚野を直接刺激し、視覚情報を脳へ伝える方法です。網膜や視神経、視床の外側膝状体に重い損傷がある場合にも、視覚を補う手段となる可能性があります。
Blindsightは、カメラの映像を脳が理解できる信号へ変換し、人工的な視覚経路を作る構想です。
既存の視覚野インプラント研究
視覚野を刺激する考え方はBlindsightに限られません。米国のOrion視覚皮質プロテーゼの初期実現可能性試験では、両眼の光覚がほとんどない、または光を知覚できない参加者6人に機器を埋め込み、安全性、手術の安全性、システムの信頼性、回復した視覚の有用性を評価する計画です。
同試験の対象は、外傷や網膜・視神経などの疾患または損傷で両眼が失明し、承認済みの治療で視力を回復できない人です。さらに、過去に実用的な形の視覚を得ていたことや、22〜74歳であることなどの条件が設けられています。
参加者は5年間追跡され、健康状態の確認に加え、視覚機能の検査や本人の報告を通じて機器の働きを調べます。Orion試験には過去の視覚経験という条件があるため、マスク氏が述べた「一度も見たことがない人」への適用条件とは異なります。
現時点で示されたことと規制上の段階
マスク氏は、Blindsightが工学面で準備できており、規制当局の承認を待っていると述べました。承認を待つ段階だという発言は、利用開始や視覚回復の効果が確認されたことを意味するものではありません。
視覚野インプラントには、脳の電極で視覚情報を表現する方法のほか、体内で電子機器を長期に安定して使う課題があります。現行の電極の空間精度はミリメートル単位で、低い視力を得るにも神経を100マイクロメートルの精度で刺激する必要があります。
また、脳へ埋め込む装置には感染や炎症などのリスクがあり、電極の周囲にできる瘢痕組織が性能を低下させることも課題です。








