a computer generated image of a human brain
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マイクロRNAで複数の遺伝子を狙う

米バージニア大学の研究チームは、集束超音波とナノ粒子を使い、マイクロRNAを脳内へ届ける膠芽腫の治療法を開発しました。実験室での試験と動物モデルでは、腫瘍の増殖が遅くなり、動物の生存期間も延びました。膠芽腫は成人に最も多い悪性脳腫瘍で、周囲の脳組織に広がるため、手術ですべて取り除くのが難しいとされています。

マイクロRNAは、遺伝子の働きを調節する小さなRNA分子です。2012年の膠芽腫研究では、マイクロRNAが主に転写後の段階で遺伝子発現を調節するものとして扱われ、転写因子などと組み合わさる制御ネットワークが解析されました。この解析では、膠芽腫に関係する遺伝子やマイクロRNAなどから、3要素のネットワーク構造を1,128個、4要素の構造を805個特定しています。

同研究では、ネットワークの一部としてノッチシグナル経路を調べ、6種類のマイクロRNAが膠芽腫で重要な役割を担う可能性を示しました。今回の治療法は、腫瘍の成長に関わる複数の遺伝子を同時に抑えることを目指し、従来の薬剤では標的にしにくい分子も対象にできる可能性があります。研究を率いたロジャー・アブナデル氏は、複数のがん関連分子を同時に狙う治療につながる可能性を述べています。

超音波で血液脳関門を一時的に開く

薬剤を脳へ届ける際の障壁となるのが血液脳関門です。血液中の毒素や感染性物質などが脳へ入るのを防ぐ仕組みで、多くの薬剤が脳腫瘍へ届きにくい一因になっています。研究チームは、MRIで位置を確認しながら集束超音波を照射し、微小な気泡とともに血液脳関門を一時的に開く方法を採りました。

気泡が超音波に反応すると関門が短時間開き、その間にマイクロRNAを載せたナノ粒子が脳内へ入ります。MRIで超音波の照射位置を誘導し、狙った領域へ届ける設計です。脳に薬剤を届ける方法は別の膠腫研究でも検討されており、UVAの研究チームはMRIを使って薬剤送達を測定する手法を開発しました。

マウスの膠腫を調べたその研究では、腫瘍内で集束超音波による送達性能が低下しない可能性が示され、一部の治療分子は正常な脳組織より腫瘍内で送達が高まる可能性も報告されています。また、分子の大きさによって送達効率が異なり、小さすぎる分子より中程度の大きさの分子のほうがよく働き、大きすぎる分子では効率が下がりました。これは今回のマイクロRNA治療とは別の研究で、脳腫瘍への薬剤送達を左右する要素を調べたものです。

動物実験からヒトの臨床試験へ

今回のマイクロRNA治療は、まだ実験段階です。研究チームは実験室と動物モデルで腫瘍増殖の抑制と生存期間の延長を確認しましたが、患者を対象に評価する前に追加研究が必要です。アブナデル氏は、将来の臨床試験につなげる考えを示しています。

集束超音波で血液脳関門を開く方法は、別の薬剤を使ったヒトの試験でも検討されています。2023年に報告された試験では、頭蓋骨に埋め込む超音波装置を使い、パクリタキセルとカルボプラチンの脳内濃度が通常時の約4〜6倍になりました。関門の回復は照射後30〜60分に大きく進み、この試験を基に、再発膠芽腫を対象とした第2相試験が進められています。

別の第1/2相試験では、新たに膠芽腫と診断され、手術と初期の化学放射線療法を受けた34人を対象に、テモゾロミド投与前に超音波で関門を開く方法を評価しました。追跡期間の中央値は44.5カ月で、試験終了時点で参加者の41%が生存しており、対照群との比較では全生存期間が40%増加したと報告されています。この試験では手技の安全性と実施可能性も評価され、手技や装置に関連する重篤な有害事象はありませんでした。

研究ごとに異なる治療段階

ヒトを対象としたこれらの試験は、化学療法薬を届ける方法を調べたもので、マイクロRNAを使う今回の治療とは薬剤も研究段階も異なります。34人の試験では、テモゾロミド投与前に関門を開く手順を検討しました。一方、2023年の試験では埋め込み型装置を使い、別の化学療法薬の脳内濃度を測定しました。

UVAの研究チームは、腫瘍周辺への薬剤送達を詳しく調べるため、新しいMRI誘導式集束超音波システムも研究に導入しました。膠腫では腫瘍細胞によって血液脳関門の構造や機能が変化することがあり、送達効率と分子サイズの関係が研究課題になっています。こうした送達研究と、複数の遺伝子を標的にするマイクロRNA研究は、脳腫瘍へ治療分子を届ける方法を異なる角度から検討しています。

今回のマイクロRNA研究は、2026年に「Journal of Clinical Investigation」に掲載されました。研究では、マイクロRNAをナノ粒子に載せ、MRI誘導式の超音波と微小気泡を組み合わせて脳内へ届けています。