Spravato
写真: CzarJobKhaya / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons

治療抵抗性うつ病の成人を対象とした臨床試験で、メブフォテニン点鼻薬を1回投与した群は、対照群より抑うつ症状が大きく改善し、その差は投与後57日まで続きました。投与後の急性作用は短く、多くの参加者が2時間以内に退院可能と評価されました。

1回投与後、症状の改善が8週間続く

第2b相試験は2023年9月から2025年4月まで、オーストラリア、ドイツ、ポーランド、スペイン、英国、米国の38施設で実施されました。スクリーニングを受けた443人のうち193人が参加し、メブフォテニン安息香酸塩8ミリグラム、12ミリグラム、または低用量の対照薬を、いずれか1回投与されました。

主要評価項目は、12ミリグラム群と対照群の投与29日後の抑うつ症状の差です。症状を0〜60点で評価する尺度で、12ミリグラム群は平均11.1点、対照群は5.5点改善し、調整後の群間差は5.3点でした。8ミリグラム群は12.5点改善し、対照群との差は6.2点でした。

改善は投与2日後に表れ、57日後も続きました。29日後に症状が半分以上改善した人の割合は、各投与群で約3分の1、対照群で12%でした。症状が寛解の基準に達した割合は8ミリグラム群で26%、12ミリグラム群で18%、対照群で8%でしたが、これらの割合は統計的検定を伴わない記述的な結果です。

投与後の観察時間と副作用

参加者は投与前後に構造化された心理的支援を受け、医療施設には少なくとも4時間滞在しました。施設スタッフは投与90分後から30分ごとに退院可能かを評価し、急性の作用が治まり、バイタルサインや見当識、協調運動が通常の状態に戻ることを基準にしました。

退院可能と評価されたのは、8ミリグラム群の85%、12ミリグラム群の78%で、約3分の2は90分時点で基準を満たしました。ただし、2時間時点で実際に退院したわけではなく、試験の規定により全員が最低4時間滞在しました。平均評価時間は2時間弱で、4時間を超える参加者もいました。

副作用は各群の約73〜85%に報告され、事象の99.7%は軽度または中等度でした。頭痛は全体で29.5%、吐き気は8ミリグラム群で33%、12ミリグラム群で40%、対照群で3%でした。多くは投与当日に現れて24時間以内に治まりましたが、12ミリグラム群では薬剤に関連する重度のパニック発作が2回あった参加者もいました。

セロトニン受容体への作用

メブフォテニンは5-MeO-DMTとも呼ばれる幻覚作用のある化合物で、セロトニン1A受容体と2A受容体を活性化します。セロトニン受容体は、神経伝達物質セロトニンが結合する部位です。

LSDやシロシビンなどの幻覚薬の作用には、主にセロトニン2A受容体が関わるとされる一方、1A受容体もトリプタミン系幻覚薬の行動作用に関与し、とくに5-MeO-DMTで役割を持ちます。そのため、今回の薬剤とシロシビンなどとの違いとして、1A受容体も作用に関わる点が挙げられます。

研究では、5-MeO-DMTとその類縁体が1A・2A両受容体にどう作用するかを、構造解析や細胞実験などで調べました。また、1A受容体を選択的に刺激する類縁体は、社会的ストレスを受けた動物で抗不安・抗うつに似た作用を示し、幻覚に似た作用は示しませんでした。この結果は動物で得られたもので、今回の患者試験で使われた点鼻薬の効果を直接説明するものではありません。

反復投与薬との通院頻度の違い

治療抵抗性うつ病に使われるエスケタミン点鼻薬は、成人では通常、最初の4週間に週2回投与し、その後5〜8週目は週1回、9週目以降は週1回または2週に1回投与する用法です。メブフォテニンの試験では、8ミリグラムまたは12ミリグラムを1回だけ投与し、その後57日目まで症状を評価しました。

エスケタミンは医療施設で医師の監督下に投与し、投与後少なくとも2時間は施設に滞在することが求められます。一方、メブフォテニン試験では最低4時間の滞在が定められていましたが、参加者の多くは2時間以内に退院可能と評価されました。この試験で評価されたのは1回投与後の経過であり、エスケタミンのような反復投与のスケジュールとは異なります。

今回の試験では抗うつ薬を併用せずに効果を調べるため、試験開始時に服用していた参加者の約3分の2は、投与の少なくとも2週間前に薬を減らして中止しました。抗うつ薬を中止したかどうかは、主要評価項目の結果と関連しませんでした。

研究チームは、副作用が比較的少なく、12ミリグラム群と同程度の改善が見られたとして、8ミリグラムを第3相試験の用量に選びました。次の試験では、効果がどの程度続くかをより長期間追跡する予定です。今回の試験は開発企業の資金提供を受け、同社の従業員が設計や解析に関与しており、参加者や施設スタッフの多くは割り当てられた用量を推測していました。