Carved steps along Ancient Roman Road
写真: Davidbena / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons

ローマ帝国の街道網を記録したデジタル地図「Itiner-e」は、総延長を約29万9,171キロと算定しました。従来の地図より約59%長く、地方道も収録しています。

約14万キロの道路が新たに地図へ

Itiner-eが対象としたのは、領土が最大規模に達した西暦150年ごろのローマ帝国です。道路の総延長約29万9,171キロは、従来のデジタル地図に収録された約18万8,555キロを上回ります。

差が生じた主な理由は、従来の地図で記録が手薄だった地方道を多く収録したことです。イベリア半島やエーゲ海地域、エジプトなどで道路の範囲が広がり、山越えの道も地形に沿った曲線として描かれました。

新しい地図には、道路区間14,769本が収録されています。幹線道路は約10万3,478キロで全体の34.58%、地方道などの二次道路は約19万5,693キロで65.42%を占めます。

地方道が日常の移動を支えた

ローマの道路は、軍隊や役人、市民の移動に使われ、公式通信や交易品の陸上輸送も担いました。幹線道だけでなく集落や農地へ延びる道を含めることで、帝国の交通網をより細かな単位で捉えられます。

幹線となる公道は公費で建設・維持され、土地は国家に属する仕組みでした。監督官が管理し、請負業者が修繕を担う一方、沿道の土地所有者にも定額の負担が課される場合がありました。

村や地区を通る道では、地域の行政官が修繕を管理しました。近隣の土地所有者に労働力を出させたり、各自の土地を通る区間を費用負担して直させたりする仕組みもありました。

道路の位置には確実性の幅がある

Itiner-eは、文献や碑文、発掘報告、既存の地図などから道路を特定し、地形図や衛星画像、航空写真を使って位置を推定しました。道路ごとの区間をデジタル化し、根拠となった情報も記録しています。

地図に含まれる道路は、ローマ時代に使われたとされる一方、正確な位置の確かさには差があります。位置が確実と分類された区間は全体の2.737%で、89.818%は推定、7.445%は仮説に基づく位置です。

この差は、道路の存在を示す知識と、地図上で正確な路線を定める知識が同じではないことを表します。地図では各区間の確実性が分類されており、幹線と地方道の分布を調べる際にも位置の精度を考慮できます。

帝国全体の変化を追うには限界も

Itiner-eは道路を14の連結した地域として収録し、欧州大陸やブリテン島、アジア・北アフリカ、地中海の島々などにまたがる交通網を示します。

一方、道路がいつ建設され、ローマ時代を通じてどのように改修・転用されたかを帝国全域で比較できる年代情報は限られています。現行データだけでは、道路網が時代とともにどう変化したかを全域規模で再構成できません。