
砂糖配給を自然実験として分析
英国の砂糖配給期に胎内と乳幼児期を過ごした人は、配給終了後に生まれた人と比べ、後年の認知症や精神疾患のリスクが低い傾向を示しました。脳画像の分析では、脳年齢が実年齢よりわずかに若い傾向でした。
研究チームは、英国の砂糖配給が1953年9月に終わったことを利用し、配給中に受胎した人と終了後に受胎した人を比較しました。個人の当時の摂取量を記録した研究ではなく、生年月日から配給への曝露を推定する自然実験です。
分析対象は、1951年10月から1956年3月に生まれたUKバイオバンク参加者60,394人です。研究チームは認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、うつ、不安の診断と、脳画像から推定した脳年齢を調べました。
認知症や不安などのリスクに差
胎内と出生後の早期に砂糖制限を受けた人では、比較群より認知症リスクが27%、アルツハイマー病リスクが46%低くなりました。うつのリスクは11%、不安のリスクは20%低い結果でした。
胎内だけで配給を経験した人では、不安のリスクが10%低かった一方、ほかの対象疾患では明確な差が見られませんでした。配給への曝露とパーキンソン病リスクとの関連も確認されませんでした。
出生後の曝露期間が長いほど、うつと不安のリスク低下が大きくなる傾向がありました。出生後12カ月間、配給下で過ごした人では、うつのリスクが23%、不安のリスクが28%低く、最も低いリスクは24カ月間曝露した人に見られました。
脳画像に見られた年齢差
出生後にも砂糖制限を受けた人の脳年齢は、比較群より実年齢に対して0.39年若い推定でした。脳年齢は、脳画像の特徴から推定した年齢です。
このグループでは、海馬、視床、被殻など、脳の深部にある複数の構造の体積が大きい傾向も報告されました。灰白質と白質のコントラストにも差がありましたが、研究著者らは複数の組織変化を反映しうる予備的な所見と位置づけています。
胎内だけで配給を経験した人では、脳構造との関連はほとんど見られませんでした。脳画像の分析対象は、脳疾患のない参加者のうち9,053人でした。
結果を読むうえでの注意点
認知症の分析では診断例が307人、アルツハイマー病は123人でした。うつの7,015人、不安の4,011人と比べ、認知症関連の結果は少数の症例に基づいています。
配給終了は、戦後の経済回復や妊産婦医療、乳児の食習慣の変化と時期が重なりました。砂糖以外の食品の配給も1954年7月までに終了しており、観察された差のうち砂糖制限による部分を切り分けるには限界があります。
研究著者らは、詳細な食事情報を集めた現代の集団で結果を再現してから、臨床や公衆衛生の提言に用いる必要があるとしています。








