黒海で商船を狙ったドローン攻撃が相次ぎ、10月14〜15日にはルーマニアの領海内で化学タンカーが被弾しました。NATO加盟国の領海に被害が及び、周辺国は対ドローン防衛や航行の安全をめぐる対応を進めています。

ルーマニア沖で2隻の化学タンカーが被弾

攻撃を受けた2隻は、黒海からドナウ川へつながるスリナ運河の河口付近に停泊していました。コモロ船籍の「Yara J」はルーマニア領海内で被弾し、乗組員全員が救助されました。

サンマリノ船籍の「Wine Trader」は領海の約1マイル外で攻撃されました。5人が救助された一方、ルーマニア当局は行方不明の乗組員7人を捜索していました。

NATOの匿名情報源は、これらの攻撃をロシアによるものと述べています。ロシアの関与が確認されれば、今回の攻撃はNATO加盟国の領海内で起きた初の事例となります。

ブルガリア沖でも商船への攻撃が続く

ルーマニア沖の攻撃に先立つ10月13日には、ブルガリア沖の排他的経済水域(EEZ)でウクライナ運航の貨物船「Chelsea 3」が攻撃され、乗組員15人が救助されました。同じ攻撃で沈没した貨物船「Dignity」では、乗組員11人が行方不明となり、5人が救助されていました。

さらに10月6日には、ブルガリア沖約80マイルでトーゴ船籍の貨物船「Alfa Watan」が沈没し、パラオ船籍の「Able」が炎上しました。「Able」の乗組員18人は救助されましたが、「Alfa Watan」の10人は生存者が見つからず、死亡したと推定されています。

一連の攻撃は、10月5日にトルコ所有の貨物船「Royad Mammadov」がルーマニア沖でドローン攻撃を受け、沈没した事例から続いています。同船の乗組員11人は救助されました。

領海とEEZでは沿岸国の権利が異なる

領海は基線から最大12海里の海域で、沿岸国の主権は海面だけでなく上空、海底、海底下にも及びます。ルーマニア沖の「Yara J」が攻撃された場所は、この領海内でした。

EEZは領海の外側に隣接する海域で、基線から最大200海里まで設定できます。沿岸国が持つ権利と管轄権は、主に天然資源の探査・開発や、それに関連する活動に限られます。

ブルガリア沖の攻撃はEEZ内で、ルーマニアの「Yara J」への攻撃は領海内で起きました。

NATOは対ドローン能力の強化を進める

NATOのマーク・ルッテ事務総長は、ブルガリアとルーマニアの首脳との会談後、同盟東部で対ドローン能力を増強したと述べました。ブルガリアはNATOの「Drone Edge」構想への参加を表明しており、加盟国は今後5年間で対ドローン能力の開発に総額400億ドルを投じる計画です。

ブルガリア、ルーマニア、トルコは、黒海の航行の安全を守るための協力を進めています。3カ国から要請を受け、NATO当局者は既存の対ドローン装備を同地域へ移す案を検討していました。

黒海の航路は、ウクライナの農産物輸出にとって重要です。ウクライナの農産物輸出の90%超を海上輸送が占めており、攻撃による混乱で貨物の一部は陸路やドナウ川経由に振り替えられています。