2026年の南極オゾンホールは9月20日に面積が2,740万平方キロに達し、この時期としては観測史上2番目の大きさになりました。南極上空を囲む強い風が冷たい空気を閉じ込め、オゾンの破壊を促したと研究者は説明しています。一方、長期的な指標ではオゾン層の回復傾向が続いており、今年の面積の大きさだけで回復が逆転したとは評価されていません。
面積は縮小に転じても、11月まで大きさが続く可能性
オゾン層は、太陽から届く有害な紫外線から地上の生命を守ります。オゾンホールは、南極上空でオゾン量が極端に少なくなった領域を指します。
コペルニクス大気監視サービス(CAMS)の観測では、今年の面積は9月20日以降、約2,400万平方キロまで縮小しました。ニュージーランドのオタゴ大学で研究する物理学者ハンナ・ケセニッチ氏は、今後数週間も面積が変動しながら大きな状態を保つと見ています。極渦が強いままなら、11月に入っても大きなオゾンホールが続く可能性があるとしています。
極渦とは、冬季に南極と周辺の海を取り囲む風の流れで、南極上空の冷たい空気を閉じ込めます。今年はこの極渦が非常に強く、成層圏の気温が例年より低くなったことが、オゾンホールの拡大につながりました。
低温の雲と日光がオゾン破壊を促す
オゾン層の破壊には、過去に排出されたクロロフルオロカーボン(CFC)が関わっています。CFCによって成層圏の塩素が増え、オゾンを減らす化学反応が進むようになりました。主要なCFCは大気中に50〜100年残るため、使用を削減しても影響は長く続きます。
成層圏は地上より高い位置にある大気の層です。南極上空では気温がマイナス78度を下回ると、オゾン破壊に関わる極域成層圏雲ができます。雲に含まれる氷の粒子の表面で、反応しにくかった塩素化合物が反応しやすい形に変わり、日光が戻るとオゾンを壊す反応が進みます。
米マサチューセッツ工科大学(MIT)で化学・環境研究を専門とするスーザン・ソロモン氏によると、今年は反応性の高い塩素の増加は検出されていません。それでも、極渦内部の低温によって、通常より多くのオゾンが失われたと説明しています。
面積だけでなく、オゾンの減り方も測る
CAMSは、南緯60度より南でオゾン量が220ドブソン単位(DU)未満の領域をオゾンホールの面積として計算しています。ドブソン単位は、大気を地表から上空まで縦に区切ったときに含まれるオゾン分子の量を表す単位です。
ケセニッチ氏らによると、今年は面積が大きい一方、オゾン量は過去の大規模な年ほど低下していません。このため、面積が大きくても、失われたオゾンの量はそれらの年より少ない可能性があります。
CAMSは面積に加え、領域内の最低オゾン量と「オゾン欠損量」を監視しています。オゾン欠損量は、オゾンホール内のオゾン量を220DUまで戻すために必要な量で、面積とオゾン量の減少の程度を合わせた指標です。気象庁も2024年、2025年の診断で、オゾン欠損量を破壊されたオゾンの総量の目安、領域内の最低オゾン量をオゾンホールの深まりの目安として使っています。
規制後の回復は、長期の変化で評価
オゾン層を破壊する物質の生産・消費を規制する国際的な枠組みが、モントリオール議定書です。環境省は、この規制が破壊物質の生産・消費の削減に寄与し、1980年代以降に続いていたオゾンホールの拡大がみられなくなるなどの成果を挙げたとしています。
CAMSは、規制後のデータにオゾンホール面積の減少傾向が表れているとしています。気象庁も、南極オゾンホールの年最大面積は2000年以降、減少しているとみられると評価しています。
ソロモン氏は、面積には年ごとの増減があり、1年や数年の大小だけではオゾンの損失や回復を評価できないと説明しています。同氏によると、長期的な指標は、オゾンホールが予想どおりゆっくり回復していることを示しています。
成層圏の冷却と長期化をめぐる研究
今年の規模について、ケセニッチ氏は大気の動きに伴う自然変動による可能性が最も高いと見ています。一方で、CFCとは別の大気循環の変化により、大きなオゾンホールが南半球の春の終わりまで残りやすくなる可能性も挙げています。同氏によると、気候変動が南極の極渦を強め、春のオゾン損失を増やす可能性を示す証拠もあります。
地表の温暖化と成層圏の冷却が同時に起こり得る点について、世界気象機関(WMO)は2007年、温室効果ガスの増加は地表を暖める一方、オゾン層のある高度では大気を冷やす可能性が高いと説明しました。低温はオゾンを破壊する反応を促し、回復を遅らせる可能性があるとしています。
米航空宇宙局(NASA)は2004年、オゾンが紫外線や下層からの赤外線を吸収して成層圏を暖めるため、オゾンの減少自体も冷却につながると説明しました。また、下層の温室効果ガスが、本来は成層圏を暖める熱を保持することも、冷却に寄与する可能性として挙げています。ケセニッチ氏は、近年の大気の変動を何が引き起こしているかを判断するには時期尚早で、さらに研究が必要だとしています。







