University of Michigan Newsのページ
出典: University of Michigan News

70 Ophiuchi ABで分かったこと

約16光年先にある連星系70 Ophiuchi AB(70 Oph AB)を調べた研究は、主星の周囲に地球質量の惑星が安定して公転できる領域がある可能性を示しました。惑星の存在を確認したわけではありませんが、2つの恒星がある系でも、主星の周囲に液体の水を保てる環境が成り立ちうるとする結果です。

米ミシガン大学を中心とする研究チームは、70 Oph AとBの周囲で木星質量以上の惑星を探し、Aから5天文単位以内、Bから0.5天文単位以内には該当する惑星がないと結論づけました。天文単位は地球と太陽の平均距離です。

一方、今回の観測はより小さな惑星を見つけるためのものではありません。研究チームは大型惑星の上限を絞り込んだものの、土星以下の惑星が居住可能領域に存在する余地は残ると説明しています。

恒星の揺れを100年分の観測で調べる

研究チームは、恒星が地球に近づいたり遠ざかったりする速度の変化を測る視線速度法を用いました。惑星の重力でも恒星の速度はわずかに変化しますが、恒星表面の活動も似た信号を生むことがあります。

解析には、約1世紀にわたる観測記録と新しい観測が使われました。マゼラン・クレイ望遠鏡とハーラン・J・スミス望遠鏡によるデータも加わり、これまで惑星の存在を示す可能性があるとされた「揺れ」を再評価しました。

その結果、木星級惑星の信号とみられていた揺れは、惑星ではなく恒星表面の変化で説明できると判断されました。研究チームは、恒星活動が惑星の信号に見える場合があることを、この系の新たな分析で示しました。

2つの恒星があっても軌道が保たれる条件

惑星の軌道には、片方の恒星を回るS型軌道と、連星の2つをまとめて回るP型軌道があります。70 Oph ABの研究で検討されたのは、主星の周囲を回るS型軌道です。

カリフォルニア大学リバーサイド校の研究者は、2つの恒星の運動をもとに、地球質量の惑星を主星から異なる距離に置くシミュレーションを行いました。惑星が恒星に衝突したり、系外へ放出されたりせず、軌道を維持できるかを調べた結果、居住可能領域内にも安定軌道がありうるとしました。

連星の重力は惑星の軌道に影響しますが、伴星があるだけで主星周辺の軌道が必ず不安定になるわけではありません。別の連星系を対象にしたシミュレーション研究でも、安定性は恒星の質量比や軌道の離心率などによって変わり、惑星の軌道が安定領域の内側にあるかが重要とされています。

K型矮星と居住可能領域

70 Oph ABの2つの恒星はK型矮星で、太陽質量の約88%と73%です。K型矮星は太陽より軽く、低温で暗い恒星に分類されます。

NASAは、K型矮星からの生命に有害となりうる放射線量は太陽の5〜25倍、赤色矮星では80〜500倍になりうると比較しています。また、K型矮星は赤色矮星より若い時期の活動が穏やかだと説明しています。

居住可能領域とは、恒星からの距離などの条件により、惑星表面に液体の水が存在しうる範囲です。ただし、領域内に安定軌道がありうるというシミュレーション結果だけでは、惑星の存在や生命の有無は確定しません。

次世代の観測に向けた手がかり

ミシガン大学の研究チームは、今回得た上限が今後の探索方法の設計に役立つとしています。同大学が参加する連星系向け宇宙ミッションSHERAでも、70 Oph ABは候補の一つです。

NASAが2040年代に計画するHabitable Worlds Observatoryは、居住可能な世界の探索を目的とする宇宙望遠鏡です。カリフォルニア大学リバーサイド校の研究者は、惑星を直接観測する前に軌道の安定性を調べる手法が、こうした将来の観測対象の検討に役立つ可能性を挙げています。

連星系で確認された惑星には、片方の恒星を回るものと、2つの恒星を回るものがあります。連星全体を回るP型軌道の惑星を集めた一覧には39の系が掲載され、例としてKepler-16やKepler-47が挙げられています。 別の研究は惑星を持つ連星・多重星系をそれぞれ103系、26系と報告しており、集計対象の分類はP型軌道の一覧とは異なります。