Airbusの航空機部品を大西洋経由で運ぶ新造RoRo船「Spirit of Toulouse」に、高さ35メートルのローターセイル6基が設置されました。風力を補助推進に使う船の導入が広がるなか、新船隊は既存船より多くの航空機部品を運び、運航時のCO₂排出削減を目指します。

Spirit of Toulouseに設置された6基のローターセイル

Spirit of Toulouseは全長168メートルのRoRo船です。RoRo船は車両や貨物を船内へ走行させて積み降ろしする船型で、この船はAirbusの航空機部品輸送に使われます。6基のローターセイルは、それぞれ高さ35メートル、直径5メートルです。

ローターセイルは甲板に立てた円筒を回転させ、風の流れとの相互作用で生じるマグヌス効果を推力に変えます。風の力で主機関の負担を軽くし、燃料消費を抑える補助推進装置です。風力だけで航行する帆船とは異なり、風を利用できる条件で従来の推進機関を補います。

風を受ける角度や風速、船の進路はローターの出力に関係します。2019年の船舶性能研究では、特定の船と航路を使った試算で、ローターセイル、翼帆、DynaRigの燃料削減率は5.6~8.9%となり、ローターセイルが最も高い値でした。同研究は、船種、速力、航路、天候に応じてローターの寸法や運転条件を選ぶ必要があるとしています。

新船隊は積載能力と推進設備を更新

Spirit of Toulouseは、Spirit of Mobile、Spirit of MirabelとともにAirbus向けの新造3隻を構成します。3隻はいずれも6基のローターセイルを備え、二元燃料エンジンを2基搭載します。エンジンはe-メタノール、バイオメタノール、船舶用ディーゼル油に対応します。

新船は約70個の40フィートコンテナと、単通路機6機分の部品一式を運ぶ設計です。現行船の積載能力は、航空機部品一式で3~4機分とされています。LDAが運航する既存船のうち最大の「Ville de Bordeaux」は、航空機6機分に相当する積載能力を持ち、新船も同等の能力を備えます。

新船には、ローターセイルと二元燃料エンジンのほか、効率的なプロペラとシャフト、低摩擦の防汚塗装、電力管理システム、排熱回収システムを搭載します。航路最適化ソフトウェアは風力推進を活用し、海況による抵抗を抑える運航を支援します。LDAはさらに、天候や海況に合わせて運航を調整するAI制御を採用するとしています。

排出削減の見込みと運航開始までの予定

Airbusは、大西洋輸送船隊の年間CO₂排出量が、2023年の約6万8,000トンから2030年に3万3,000トンへ減ると見込んでいます。この船隊全体の見通しには、船の効率向上、風力推進、低排出燃料の利用が含まれます。LDAは、新船1隻あたりの年間CO₂排出量が前世代より70%減ると見込んでいます。

Deltamarinは、新造船3隻の引き渡しを2026年以降としています。Airbusも新船隊が2026年から運航に入る予定としていました。Spirit of Toulouseは設置後、ローターセイルの試験を含む海上試運転に向けて準備が進められ、初航海では追加調整が予定されています。

LDAは、輸送能力を増やしながら、2023年比で大西洋航路の年間平均CO₂排出量を約50%減らすとしています。

商用船で採用が広がる風力推進

国際風力船舶協会によると、2026年6月時点で風力推進システムを搭載した大型商用船は100隻を超え、個別の設備は230基以上に達しました。2022年5月の大型船21隻から、4年間でほぼ5倍に増えています。タンカーやばら積み船に加えて、RoRo船、フェリー、一般貨物船でも導入が進んでいます。

風力推進には、回転する円筒を使うローターセイルのほか、剛翼帆、吸引帆、凧を使う方式があります。翼帆は翼型の形状で揚力を生み、風向に応じて帆の角度を調整して推進力を得ます。風が弱い航路や平均速力が高い運航では、翼帆による燃料削減が小さくなる場合もあります。

実船での効果を示す例として、タンカー「Maersk Pelican」ではローターセイル2基を使った1年間の試験で、燃料消費が8.2%減ったと独立検証されました。ばら積み船「Pyxis Ocean」では、WindWingsを2基搭載した6カ月の試験で、平均すると1日あたり約3トンの燃料を削減したとCargillが報告しています。