ロシアは北極海航路(NSR)で、2027年初めから東向きの定期航行を通年化する計画です。実現すれば、北極圏で生産したLNGや石油を冬季にもアジアへ運ぶ体制づくりが進みます。一方、砕氷船の増強に加え、航路沿いの救難・通信・医療体制の整備も課題として残っています。
2027年初めの定期航行を計画
国営原子力企業ロスアトムの北極圏局を率いるウラジーミル・パノフ氏は、冬季の定期航行に向けた準備が最終段階にあると説明しました。計画では、ロシアの大手荷主が東向きの定期輸送を始める時期に合わせ、2027年初めに通年航行へ移る見通しです。
ノバテクはすでにNSRを使ったLNG輸送を行っており、ロスネフチのボストーク・オイル計画からの原油輸出も始まっています。パノフ氏によると、同計画の原油を積んだ航海はこれまでに6回実施されました。
2027年1月1日には、EUによるロシア産LNGの長期契約分の輸入禁止が発効する予定です。通年航行が整えば、北極圏の生産拠点からアジアの買い手へ向かう輸送で、季節的な航行期間だけに頼らない選択肢が生まれます。
砕氷船の増強と冬季の運航課題
原子力砕氷船「チュクチ」は、プロジェクト22220型の4隻目として2027年初めの就航が予定されています。就航すれば、運航中のロシアの原子力砕氷船は計9隻になるとパノフ氏は述べました。
Arc7は商船向けの高い耐氷性能を持つ船級です。ABBが6隻の新造LNG船向けに受注した推進システムでは、船ごとに17メガワットのアジポッド推進器を3基搭載し、合計出力は51メガワットです。
この6隻は厚さ2.1メートルまでの氷を航行できる設計で、同等の船は同じ条件で砕氷船の支援を必要とするとABBは説明しています。アジポッドは船体の外側に電動機を備えたポッドを置き、360度回転して操船性を高める方式です。
2017年にヤマルLNG向けに引き渡されたArc7船も、後進時に厚さ2.1メートルまでの氷を単独で航行できる性能を備えていました。これらの船には3基のアジポッドが搭載され、推進出力は合計45メガワットでした。
過去の航海実績と残る難所
冬季航行は今回が初めてではありません。2021年1月にはノバテクのArc7船が東側の航路を通り、「クリストフ・ド・マルジェリー」は問題の報告なく通過した一方、「ニコライ・エフゲニエフ」はベーリング海峡付近で3基ある旋回式推進器の1基を損傷しました。
2022年12月から2023年1月にかけては、Arc7船「ウラジーミル・ヴォローニン」がサベッタのヤマルLNG基地と中国の間を往復し、所要日数は42日でした。航海の一部では原子力砕氷船の支援を受けています。
2018年にサベッタから中国の江蘇如東港へ向かったLNG船2隻は、NSR経由で19日を要しました。スエズ運河・マラッカ海峡経由では所要日数が35日です。
この輸送に使われたのは、砕氷船の随伴なしで北極圏からLNGを運ぶために建造されたArc7船でした。ヤマルLNGは、1隻あたり17万立方メートル超を積めるArc7船15隻を使う計画でした。
通年化に向けた整備
ロシアは以前、2024年初めの通年東航を目指していましたが、定期運航は予定どおり始まりませんでした。試験航海の実績やArc7船の単独航行期間を広げる規則変更があった後も、定期便には至っていません。
冬季の運航では、特に3月と4月が難しい時期として残っています。ロシアは新型Arc7船と砕氷船を増やす一方、船団の速度向上を優先課題に挙げ、航路沿いの緊急対応、通信、医療の基盤も拡充する必要があるとしています。









