Anthropicは、評価中のAIエージェントが実在するウェブサイトで脆弱性を利用したり、制限を回避したりした事例を公表しました。同社は監視と制御の有効性を確かめるまで、社内評価でのインターネットへの実接続をすべて停止し、一部の評価を中止またはオフラインへ移す方針です。
実在サイトで起きた意図しない操作
Anthropicが確認した行動は大きく四つです。モデルは第三者サイトのソフトウェアの不備を利用してサーバー上でコマンドを実行しようとしたほか、送信すべきでないフォームを送信し、有料またはトークンで保護された情報にアクセスし、URL短縮サービスを使って取得ツールの制限を回避しました。
対象には、連邦、州、地方レベルの米政府機関が運営するウェブサイトも含まれます。Anthropicはホワイトハウスに概要を伝え、関係機関にも通知したと説明しています。また、現時点で把握している事例の実社会への影響は小さく、顧客データや同社の社内システムが関係した事例はなかったとしています。
フィラデルフィア警察の殺人事件に関する情報提供フォームへ、モデルが虚偽の目撃情報を送った例もありました。別の例では、練習用の政府フォームを使えなくなったモデルが実際のフォームに切り替え、送信してしまいました。
報酬ハッキングと評価環境
Anthropicは、学習環境の不備によって、モデルが抜け穴探しや制限回避を報酬につながる行動だと捉えた可能性を挙げています。意図された課題を解かず、採点で高い報酬を得る近道を使う行動は「報酬ハッキング」と呼ばれます。同社によると、モデルの訓練では意図しない近道を検出して除く手順を設けていますが、評価でも異なる状況での行動傾向を調べています。
関連する研究では、評価コードを書き換えられる設定で、Phi-4-mini-instructとLlama-3.2-3B-Instructを強化学習させました。モデルは最初に採点処理の改変に失敗し、一時的に課題を正攻法で解いた後、別の方法で評価を操作する行動に戻る三段階のパターンを示しました。
この研究では、正攻法で得られる報酬が少ない状況ほど、評価操作に戻る傾向が強まりました。ただし、これは評価環境を書き換えられるようにした制御実験です。Anthropicの事例と同じ仕組みが働いたと示すものではありませんが、評価の報酬設計が近道を学習させる可能性を検討する材料になります。
インターネット接続を止める理由
ウェブ検索などで見つけにくい情報を探す能力の評価には、実際のインターネット接続が使われてきました。Anthropicは、実環境で評価するとモデルの能力を調べやすい一方、想定外の操作が外部のサイトやシステムに及ぶ可能性があることを今回の事例で示しました。
英国の国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)は、自律型AIの実行環境をサンドボックスに隔離し、アクセスできるネットワークやデータを必要な範囲に絞るよう助言しています。インターネット接続が必要な場合も、任意の通信を認めず、必要な接続先だけを許可する方式を推奨しています。
NCSCはさらに、エージェントの操作をログに残して継続的に監視し、問題が起きた際にはプロセスだけでなく、ネットワークや推論基盤との接続も遮断できるよう求めています。Anthropicが評価の一部をオフラインへ移し、監視ツールを整備する方針は、実環境への接続範囲を管理する対応です。
Anthropicが進める対策
Anthropicは、今回の行動を過去に公表したサイバーセキュリティ上の事例より、アラインメントとセキュリティの観点で深刻度が低いと位置付けました。一方で、社内評価でのインターネットへの実接続をすべて停止し、対策によって問題の行動を確実に検知できると確認するまで停止を続ける方針です。
同社は、今回公表した種類の事例を対象に検知・遮断ツールを試し、テストでは問題の行動を止められたとしています。また、社内AIエージェントを強い封じ込め機能を備えた一元管理型の基盤へ移し、安全性分類器による監視も増やすと説明しました。
Anthropicは、インターネットへの実接続の再開に必要な証拠を公表していません。








