
1970年代の計算手法が生んだ機体形状
F-117ナイトホークは、平らなパネルを組み合わせた角ばった形状でレーダー反射を抑えた攻撃機です。設計の特徴は、当時の計算機で扱いやすい形状を選び、電波を送信元へ返しにくくした点にあります。
1970年代、ロッキードの技術者は平面からのレーダー反射を曲面よりも確実に計算できました。ソ連の物理学者ピョートル・ウフィムツェフによる電波散乱の研究をもとに、デニス・オーバーホルザーとビル・シュローダーが平らな三角形からの反射を予測するプログラム「Echo 1」を開発しました。
その計算を用いた試作機「Have Blue」は、F-117につながる技術実証機です。ロッキード・マーティンによると、角度をつけたパネルに加えてレーダー吸収材を使い、機体から戻る電波を減らしました。
平面パネルが電波を返す方向
レーダー断面積(RCS)は、物体の実寸ではなく、レーダーに返る電波の強さを表す指標です。F-117のパネルは、入射した電波の多くを送信元とは異なる方向へ反射するよう配置されていました。
機体の前縁は67.5度に後退し、パネルの向きも反射方向を制御するよう設計されました。反射は広い角度に散らばるのではなく、限られた方向に集中するため、その反射の筋にレーダーが位置すれば強い反応が返ることもあります。
レーダー断面積が小さくなると、探知距離も同じ割合ではなく、緩やかに短くなります。Envanter Medyaは一般的な関係として、RCSが10分の1なら探知距離は約1.78分の1、100分の1なら約3.16分の1になると説明しています。機体の角度やレーダー周波数によってRCSが変わるため、F-117とF-15級戦闘機の探知距離差を単一の倍率で示すことはできません。
得意とした周波数帯
F-117の平面形状が特に効果を発揮したのは、波長が短いXバンドの火器管制レーダーです。Xバンドはおよそ8〜12GHzで、数フィート幅のパネルに対して波長が短いため、パネルの向きによって反射を制御しやすくなります。
一方、LバンドやVHFのような低い周波数では波長が長く、機体全体の寸法や電気的な特性が影響します。そのため、角度をつけたパネルや吸収材による効果は小さくなり、条件によっては探知される可能性が残ります。
低周波レーダーは機体の存在を捉えられても、ミサイル誘導に必要な精密な追跡には向きにくいという違いがありました。1980年代の設計では、火器管制に使う高周波レーダーへの対策を優先しつつ、複数種類のレーダーを組み合わせる防空網への対応が課題でした。
操縦上の代償と後続機への展開
レーダー反射を抑えた形状は空力的に不安定で、F-117は飛行制御用コンピューターが機体を継続的に補正するフライ・バイ・ワイヤを必要としました。操縦系統にはF-16を基礎とするハードウェアが使われ、制御則はF-117向けに開発されました。
機動のたびにレーダー断面積が変化するため、パイロットは急な旋回を避けて飛行しました。兵装は機内の爆弾倉に収め、エンジン吸気口や排気口もレーダー反射や熱の抑制を考慮した形状にするなど、機体各部が低被探知性を優先していました。
後のB-2では、平面パネルを主体とするF-117とは異なり、連続した曲面を使う設計が採用されました。Who That Plane?!によると、B-2は曲面に加えて、反射を限られた方向へ集めるようエッジの角度をそろえています。レーダー吸収材も形状を補い、電波を吸収する役割を担います。
戦闘で示された強みと限界
1991年の湾岸戦争では、42機のF-117が展開し、約1,300回の作戦飛行を実施しました。連合軍の戦闘・攻撃機の2.5%に当たる機数で、戦略目標の約40%を攻撃したとされています。
一方、1999年3月27日には、NATOの作戦中にユーゴスラビア側の部隊がF-117を撃墜しました。機体は短距離でVHF早期警戒レーダーに捉えられ、爆弾倉が開いていたことなどが交戦に関わったとする分析があります。
この事例は、平面パネルによる設計があらゆる方向・周波数で探知を防ぐものではないことを示しました.











