
APIキーの悪用でクラウド料金が急増
LLMjacking(LLMジャッキング)は、盗んだ認証情報などを使って企業の大規模言語モデル(LLM)へのアクセスを乗っ取り、第三者に利用させる攻撃です。2026年に確認された事例では、不正利用によるクラウド料金が1日で10万ドル(約1,600万円)を超え、組織によっては不正請求額が最大100万ドル(約1億6,000万円)に達しました。
この攻撃では、公開状態のLLM接続先を探す方法や、保護されていない環境から有効なAPIキーやクラウド認証情報を盗む方法が確認されています。侵入後、攻撃者はLLMへのアクセスを「LLM Mixer」と呼ばれる中継サービスに渡し、利用者に再販売します。
LLM Mixerは、盗まれたAPIキーを使って利用者の要求を正規のLLMサービスへ中継します。被害組織側では正規のAPI利用として記録され、トークン使用料が請求されるため、アクセスの転売によってクラウド料金が発生します。
認証情報の窃取から利用継続まで
初期侵入に使われた情報には、クラウドのIAM認証情報、サービスアカウントキー、GitHubのアクセストークン、ログイン中のセッショントークン、LLMのAPIキーがあります。公開リポジトリに残ったキーを探す例や、設定不備のあるサービスアカウントキーからクラウド環境へ侵入する例も確認されました。
侵入後は、コードリポジトリやデータベース、ログ、シークレット管理サービスを調べ、追加の認証情報を探します。権限の強いアカウントを作成したり、仮想マシンにSSHキーを追加したりして、アクセスを保つ例も報告されています。
APIへの要求が急増し、1秒あたり1,000件を超える場合もあります。Jet Nightは月額60ドル(約9,500円)の「無制限アクセス」プランを掲げています。盗まれた第三者のAPIキーを使ったサービスでは、8時間未満に50万回を超えるAPI呼び出しが行われ、被害組織に100万ドル(約1億6,000万円)近いトークン費用が発生しました。
LiteLLMなどのゲートウェイも標的に
LiteLLMは、アプリケーションから受け取った要求を設定済みのモデル提供元へ中継するLLMゲートウェイとして使われます。アプリには提供元のキーではなく、ゲートウェイが発行する仮想キーを渡し、そのキーにモデル利用や予算、レート制限を設定できます。
要求はゲートウェイのAPIに送られ、指定されたモデルを通じて提供元へ転送されます。応答はゲートウェイ経由でアプリに返り、利用量やトークン数も記録されます。この構成では、ゲートウェイの認証情報や提供元のキーが悪用されると、正規の中継経路を通じて不正利用されます。
攻撃者がLiteLLMのゲートウェイを狙い、脆弱性CVE-2026-40217を悪用した事例も確認されています。Google Threat Intelligence GroupとMandiantは、LLMの不正利用に加え、被害側のクラウド環境に公開プロキシやエージェント型の処理を設置するケースも報告しました。
権限管理と利用上限を組み合わせる
Googleは、必要な役割や作業に応じた最小限の権限を付与し、明示的に必要でない権限を拒否するよう推奨しています。認証情報の一元管理と定期的な更新、フィッシングに耐性のある多要素認証の利用も対策に挙げています。
APIクォータは、APIごとの日次・分単位・利用者単位の要求数を制限し、サービスへの通信量を抑えます。一方、予算と予算アラートは、プロジェクトや請求アカウント全体の費用を管理します。
クォータは上限を超えてから適用されるまでに遅れが生じることがあるため、料金対策に使う場合は余裕を持って上限を設定します。Googleは、APIの利用量や支出の上限に加え、監査ログと推論ログを有効にし、不審な認証情報の確認、LLMサービスの有効化、異常な利用量を監視するよう勧めています。









