
地上の砲身で初速を与える仕組み
米カリフォルニア州アラメダのLongshot Space Technologyは、圧縮ガスを使う長い砲身から貨物を射出し、宇宙輸送に利用する構想を進めています。ロケットの推進系をすべて機体に載せるのではなく、加速の一部を地上の再使用可能な設備で担う考えです。
同社が採用するのは、砲身に沿って複数回ガスを注入する「多段式」方式です。弾体が砲身内を進むタイミングに合わせて圧縮ガスを送り、段階的に速度を上げます。
現在はカリフォルニア州の試験施設で、長さ70フィート、直径6インチの砲を使っています。これまでに到達した速度はマッハ4程度で、同社は弾体を極超音速に近い速度まで加速できるとしています。
まず極超音速試験、宇宙輸送はその先
Longshotは、極超音速機器の試験を当面の市場とし、宇宙への貨物輸送を将来の用途に位置づけています。公式サイトでは、宇宙輸送の対象を無人貨物としています。
同社は、長さ328フィート、直径30インチの設備を建設し、将来的には砲身を約3,000フィートまで延ばす計画を示しています。その規模では、220ポンドの貨物をマッハ8まで加速できるとしています。
宇宙輸送に向けた構想では、貨物を秒速5キロメートルまで加速し、貨物側の推進装置で軌道に入れることを想定しています。そのためには、長さ約10キロメートル、直径約10フィートの砲が必要になると同社は見積もっています。
過去の砲発射研究が示した実績
多段式の砲身加速は、Longshotが初めて試す考え方ではありません。ジョンズ・ホプキンス大学応用物理研究所(APL)の1999年の検討は、分散注入式の軽ガス砲を小型衛星の打ち上げに使う案を扱い、複数箇所から作動流体を注入して加速の山を平らにする仕組みを説明しました。
1960年代の高高度研究計画(HARP)では、砲から発射したロケットで高度100キロメートルを超える大気を調べました。APLの論文は、電子機器やセンサー、ロケットが1万Gを超える加速度に耐えた一方、この初期の取り組みではペイロードを軌道に投入できなかったと記しています。
マギル大学の1965年の試験報告では、バルバドスの16インチ砲を延長した試験で、1週間に13発を追加発射し、同砲の累計は107発になりました。報告は試験目的を達成し、砲の機械的性能は軽微な不具合を除いて良好だったとしています。
同じ試験では、同重量の弾体で比べた砲口速度が延長前より30%上がり、同じ速度を得るための装薬量は25%減りました。一方、搭載物の射出機構には改善が必要との結果も記録されています。
貨物の設計とコストが課題
砲からの射出では、搭載物が発射時の大きな加速度に耐え、その後も大気中の高速飛行による加熱や空力上の負荷に対応する必要があります。APLの検討は、耐熱性、空力安定性、機器の配置を設計上の課題に挙げ、構造と電力系に割く質量も増えると分析しました。
軌道投入には、砲口からの射出だけでなく、弾体側の推進装置も必要です。Longshotは、計画する貨物輸送では射出後に推進装置で軌道へ向かう構成を想定しています。
打ち上げ費用の比較では、2018年のNASAエイムズ研究センターの論文が、Falcon 9の低軌道向け価格を1回6,200万ドル、最大積載量を22,800キログラムとして、1キログラム当たり2,720ドルと算出しました。同論文は、スペースシャトルの低軌道向け費用を1キログラム当たり54,500ドルとしています。
Longshotのマイク・グレースCEOは、計画が実現した場合の宇宙輸送費を1キログラム当たり50ドルと見込んでいます。ただし、この金額は同社の将来予測であり、現在運用中の打ち上げ価格ではありません。
TechCrunch Disrupt 2026は10月13日から15日までサンフランシスコで開催され、Longshotについて同社から話を聞ける機会です。









