
ロールス・ロイスは、バイパス式のコンウェイから3軸式のRB211、トレント系列へと民間航空エンジンを発展させてきました。ファンの大径化やギアボックスの導入も進み、長距離路線を担う双発機の運航を支える技術につながっています。

コンウェイが採用したバイパス方式
1950年代の初期ジェット旅客機では、取り込んだ空気のほぼすべてをエンジンの燃焼部へ通すターボジェットが使われていました。コンウェイは、空気の一部を高圧の燃焼コアの外側へ流す「バイパス方式」を採用し、1950年代半ばに開発された初期の量産ターボファンとなりました。

コンウェイでは吸気の約30%をコアの外側へ迂回させ、燃焼後の排気と混ぜて噴出させます。この方式は排気速度を抑え、燃料消費率と離陸時のジェット音を下げました。
1960年に就航し、ボーイング707-420型やダグラスDC-8-40型の大西洋横断運航に使われました。4基を搭載したヴィッカース・スーパーVC10では、各エンジンが21,000重量ポンド(93.4キロニュートン)の推力を発生しました。
RB211の3軸構造と開発危機
ワイドボディ機向けに大きな推力が求められた1960年代後半、ロッキードL-1011トライスター用に開発されたのがRB211です。低圧・中圧・高圧の3つの軸を備え、各圧縮機とタービンを異なる回転速度で動かす設計でした。
ロールス・ロイスの3軸式では、低圧・中圧・高圧の圧縮機を別々の軸で駆動します。GEやプラット・アンド・ホイットニーの一般的な2軸式では、低圧・高圧の2軸を使います。軸を分けることで、それぞれの圧縮機・タービンを適した速度で回します。
RB211はファンブレードに炭素繊維複合材「ハイフィル」を使う計画でしたが、模擬バードストライク試験でブレードが破損し、チタン製への設計変更が必要になりました。開発費の増大を受けてロールス・ロイスは1971年に管財人管理となり、英国政府が国有化しました。
トレント系列が広げた適用機種
RB211-22Bは1972年、L-1011トライスターで商業運航を始め、42,000重量ポンド(187キロニュートン)の推力を発生しました。その後のRB211-524はボーイング747や757にも搭載され、3軸式の設計はトレント系列へ引き継がれました。
エアバスA330向けのトレント700は、直径97.4インチ(2.47メートル)の中空チタン製ファンを備え、最大72,000重量ポンド(320キロニュートン)の推力を発生します。ロールス・ロイスによると、A330で60%を超える市場シェアを獲得しました。
トレント700の後には、ボーイング777向けのトレント800、エアバスA380向けのトレント900、ボーイング787向けのトレント1000が続きました。トレント700は運用中の累計で7,000万時間を超え、800万便以上に使われたとロールス・ロイスは公表しています。
トレントXWBとギア式UltraFan
エアバスA350 XWB向けに設計されたトレントXWBは、2015年1月に商業運航を開始しました。直径118インチ(3メートル)のチタン製ファンと、全体圧力比50対1の圧縮機系を備え、初期世代のトレントに比べて燃料消費を15%削減しました。
ロールス・ロイスによると、トレントXWBは8,000海里(14,816キロメートル)を超えるノンストップ路線を可能にし、長距離双発機が4発機を置き換える動きを支えました。UltraFanは、ファンと高速回転するタービンコアの間にギアボックスを置き、両者を別の速度で回す設計です。
UltraFanのギア式設計は、高推力・高バイパス比エンジンで効率的に動力を伝える仕組みです。ロールス・ロイスが掲げる燃料効率の改善目標は、初期世代のトレント700比で25%です。また、同社は100%持続可能な航空燃料への対応を掲げ、市場投入時期を2030年代としています。










