図1 実験環境の構成
出典: nii.ac.jp

柏と神戸を結ぶ800Gbpsの実証

国立情報学研究所(NII)、理化学研究所、東京大学、NTT東日本、NTT西日本の5者は、千葉県柏市と兵庫県神戸市の研究拠点を結ぶ通信実証で、最大約775Gbpsのファイル転送速度を記録しました。2つの実用アプリケーションを同時に使い、800Gbps回線帯域の約97%に達しました。

断続的な実験では、750Gbpsを超える転送速度を数分間維持できることも確認されました。5者は、長距離通信でも既存アプリケーションで800Gbps回線を活用できたとしています。

実証には、NTT東西の光波長専有接続サービス「All-Photonics Connect powered by IOWN」を使いました。大阪のNTT西日本局舎と柏のNTT東日本局舎を800Gbpsで結び、各局舎から神戸・柏の研究拠点までは400Gbps回線を2本ずつ接続しました。

2種類のアプリでデータを転送

転送には、理研と東大が運用するHPCI共用ストレージと、NIIが開発したファイル転送ツール「MMCFTP」を使いました。HPCI共用ストレージは、研究機関間で大規模なデータを共有する基盤です。

HPCI共用ストレージは、東大柏地区キャンパスと理研神戸拠点に分散する計算資源の間でデータを共有する用途にも使われています。過去には、理研のX線自由電子レーザー施設SACLAで得た実験データを同ストレージへ転送し、スーパーコンピュータ「富岳」などで大規模解析するサービスが始まっています。

MMCFTPは、NIIが開発した恒速・高速ファイル転送ツールです。実証では、NVMe SSDを多数搭載したNIIのサーバーを両拠点に置いて転送し、ストレージを使うアプリケーションと合わせて性能を測りました。

APNの光パスと遅延

APN(All-Photonics Network)は、端末からネットワークまで光ベースの技術を使い、拠点間にエンド・ツー・エンドの光波長パスを提供するネットワークです。今回の実証では、光波長を専有する接続で柏と神戸を結びました。

一般的なIPネットワークでは、データをIPパケットに変換して経路制御し、イーサネットフレームに載せて中継します。光フルメッシュ網の構想では、拠点間に光パスを設け、パケット変換や多重化などの電子処理を抑えて、処理待ちに伴う遅延を減らします。

両研究拠点は学術情報ネットワーク「SINET」でも接続されています。今回の実証環境で測定したAPNの遅延値は、SINETと比べて約20%低くなりました。

研究データの共有に向けた次の段階

5者は共同研究を続け、APNを使った大規模・高品質なデータ転送の検討や概念実証を進める方針です。NTT東西のAPN基盤、NIIのSINETに関する知見、理研と東大の大規模ストレージに関する知見を持ち寄り、データ同期技術の共同研究も進めます。

実証環境で得た結果を、研究データの利活用環境の拡張や、NIIが検討する次期SINETなどに反映する計画です。今回の転送速度は、柏・神戸間の特定の検証環境で得られたものです。

2026年11月の国際会議・展示会「SC26」では、実証環境の400Gbps区間を米国シカゴの会場まで延伸し、MMCFTPによる転送実験を行う予定です。NIIは、サーバー間と国際回線を含む全区間で400Gbps以上を使うファイル転送実験を、日米間で初めての試みとしています。

図3 SC26で実施予定のファイル転送実験の構成(日本〜米国シカゴ)
出典: nii.ac.jp