
SanaHealは、濡れて凹凸のある組織に素早く貼り付き、空気や液体を通さない封止を目指す生体接着剤を開発しました。外傷による出血を止める用途では規制当局の承認を得ており、手術中の止血や損傷組織の修復に向けた臨床試験を2027年に始める予定です。
縫合やステープルを補う接着技術
心臓バイパス手術や帝王切開、ヘルニア・腱の修復などでは、組織同士をつなぐために縫合やステープルが使われます。針や器具で組織を留める処置では、小さな誤差が漏れにつながることがあり、細かな縫合が必要な手術もあります。
SanaHealの接着剤は、組織を縫い合わせる代わりに、貼り付けて接合することを目指しています。湿った面や不均一な面にも短時間で接着し、空気と液体を通さない封止を形成します。
この技術はMITで開発が始まり、フジツボやクモの糸など、自然界の粘着素材に着想を得ました。創業者のヒョヌ・ユク氏は、縫合より侵襲が少なく、手術支援ロボットでも扱いやすい方法だと説明しています。
ハイドロゲルが濡れた組織に接着する仕組み
ハイドロゲルはポリマーと水からなる柔らかい材料です。組織と似た機械的・電気的性質を持つことが、生体との適合性につながります。SanaHealの初期の試作では、紙おむつにも使われる吸水性素材のポリアクリル酸で組織表面の水を吸収し、数秒で接着する両面テープ状の構造を採用しました。
研究チームは、臓器を数秒で封止する生体接着パッチも作製しました。このパッチは血液の漏出を防ぎ、感染、痛み、瘢痕のリスクを減らす可能性があるものとして検討されました。
既存の組織用接着剤を調べた小規模研究
組織用接着剤を手術で使う例として、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術でステープル線を補強する研究があります。2015年10月から2016年3月に行われたこの前向き観察研究では、50人をシアノアクリレート系接着剤とフィブリン糊の各25人に分けました。
どちらの接着剤も塗布しやすく、手術時間は延びませんでした。術後合併症は両群で報告されず、ステープル線を覆うのに使った量はシアノアクリレート系接着剤が約1ミリリットル、フィブリン糊が約2ミリリットルでした。
シアノアクリレート系接着剤は60〜90秒で重合し、縫合せずに大網をステープル線へ接着する「化学的な大網形成」にも使われました。研究者らは、この方法が術後合併症を防ぐかどうかは無作為化試験で確かめる必要があるとしています。これは胃の切除後にステープル線を補強する別の接着剤の研究で、SanaHealのハイドロゲルとは材料も用途も異なります。
手術への展開と臨床試験
SanaHealの技術は、外傷性出血を止める用途で規制当局の承認を得ています。次の段階として、手術中の出血制御やさまざまな損傷組織の修復を対象とする臨床試験を2027年に始める予定です。
同社は自社だけで多数の製品を開発するのではなく、大手医療機器企業と組み、開腹、腹腔鏡、内視鏡手術などに使う製品の開発・商用化を進めています。ヘルニアや神経の修復などでは、既存の器具と組み合わせ、縫合せずに組織を留める用途も挙げられています。











