2024年の米大統領選で、ドナルド・トランプ氏とカマラ・ハリス氏がTikTokに投稿した動画を分析した研究で、トランプ氏の短い動画やユーモアを使った投稿に高い反応が見られました。一方、親しみやすさを演出する動画や対立候補への攻撃では、反応の統計的に有意な差は見られず、再生数や反応の多さは投票行動への効果を示すものではありません。
276本を分析、投稿数と動画の長さに違い
イスラエルのバルイラン大学で情報科学を研究するJenny Bronstein氏とTal Eitan氏は、両候補の公式アカウントが2024年夏の開設から11月の選挙翌日までに投稿した全動画を分析しました。対象はトランプ氏の57本とハリス氏の219本、計276本で、研究成果は政治マーケティングの学術誌「Journal of Political Marketing」に掲載されました。
研究者らは、カメラに向かって話す形式、日常的な場面、群衆の映像といった表現方法を分類しました。ユーモア、対立候補への批判、著名人の登場も記録し、再生数、いいね、コメント、シェアとの関係を調べました。
トランプ氏の動画は平均18秒で、投稿頻度は低いものの、1本当たりの平均的な反応は高い傾向がありました。ハリス氏はより頻繁に投稿し、平均37秒の動画で政策課題を詳しく扱っていましたが、反応は比較的安定している一方、平均水準は低い傾向でした。
両候補の8割超が集会や移動の映像を使用
両候補とも、動画の80%超に遊説先、車列、集会の様子を取り入れていました。研究者らは、活気のある群衆や航空機から降りる姿を、勢いや広範囲での活動を象徴する表現と捉えています。トランプ氏では、こうした映像を含む動画とシェア数の多さに関連がありました。
カメラに向かって直接語りかける動画は、トランプ氏の投稿の約3分の2を占め、同氏のアカウントでは再生数やいいねの多さと関連していました。主なテーマは経済、国境管理、勝利への自信で、強い言葉を使った語り口でした。
ハリス氏が直接語りかける形式を使ったのは、投稿の約3分の1でした。人権、災害からの復旧、生殖に関する権利などを取り上げ、市民としての参加を促す内容が多く、トランプ氏よりも長く説明的な構成でした。
ユーモアには反応、日常場面や攻撃には有意差なし
ジョーク、ミーム、パロディーを中心とする動画は、両候補とも全体の10%未満でした。ミームは、ネット上で共有・改変される画像や表現を指します。トランプ氏では、この種の投稿が再生数、いいね、コメント、シェアのすべてで統計的に有意に高い反応と結びついていました。
一方、両候補は約半数の動画に、日常的で親しみやすい場面を盛り込んでいました。トランプ氏はマクドナルドへの訪問やごみ収集車に乗る姿を、ハリス氏は料理や家族の世話に関する個人的な話を使いましたが、こうした動画の反応に統計的に有意な差はありませんでした。
対立候補への言及は、ハリス氏では約5分の1、トランプ氏では約3分の1の動画に含まれていました。ハリス氏は画面を分割して相手の映像を流し、詳しく反論する形式を多用したのに対し、トランプ氏が使ったのは皮肉や視覚的な誇張、直接的な嘲笑です。相手への攻撃を中心とした動画でも、反応の統計的に有意な差は見られませんでした。
著名人やネット上の発信者との共演にも違いがあり、トランプ氏は競技スポーツやポッドキャスト分野の男性を、ハリス氏は多様な音楽家、俳優、メディア関係者を登場させました。トランプ氏では、こうした人物が登場する動画とシェア数の多さに関連がありました。
おすすめの仕組みと、再生数を読む際の注意点
TikTokの「For You」は、利用者の関心に合わせて動画を並べるおすすめフィードです。TikTokが2020年に説明した仕組みでは、いいね、シェア、フォロー、コメントなどの行動に加え、動画の説明文、音声、ハッシュタグを推薦に利用します。TikTokは、長い動画を最後まで見る行動を強い関心の指標として扱い、視聴者と投稿者が同じ国にいることなどより重く評価するとしています。
First Page Digitalも、推薦に使われる行動として視聴時間や最後まで見た割合、再視聴などを挙げています。TikTokは、フォロワーが多ければ視聴者の基盤が大きいため再生数が増えやすい一方、フォロワー数や過去の人気動画の有無は推薦の直接的な要因ではないと説明しています。
政治動画の届き方を調べた別の研究でも、分析方法によって結論が変わりました。Hazem Ibrahim氏とTewoflos Girmay氏は、米国の移民取り締まり、トランプ氏、イスラエル・パレスチナを扱う67アカウントの2,753本を追跡し、556,946件の時間ごとの観測を集めました。観測をまとめて比較すると立場による到達度の差が見えましたが、アカウント単位の分析では、いずれのテーマにも有意な差はありませんでした。
両氏は、同じ動画を繰り返し測った値を独立した観測として数えることや、アカウント規模、使用言語の違いが見かけ上の差に関わっていたと説明しています。対象データでは中程度から大きな到達度の抑制を示す証拠は得られず、一方で反トランプや親パレスチナの内容は、1回の視聴当たりの反応が多いという別の差がありました。
Bronstein氏とEitan氏の研究も、対象をTikTok上の2候補と1回の米大統領選に限定しています。公開された反応指標が捉えるのは動画の広がりであり、視聴者がどう感じたか、投票行動が変わったかは測定していません。また、感情的な表現の有無は分類しましたが、その強さまでは測っていません。






