
米ベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)が10月7日、東京に日本オフィスを開設し、日本での投資を本格化しました。重点分野には防衛テクノロジーやロボティクス、AI、エネルギーを挙げています。投資先への資金提供に加え、日米の企業や人材をつなぐ支援を行う方針です。
東京拠点で投資と事業展開を支援
a16zはシリコンバレーを拠点とするベンチャーキャピタルで、複数のファンドを通じて約1,000億ドルの資産を運用しています。今回の日本展開では、日本企業への投資と、日本の投資先が海外へ進出する際の支援に取り組みます。
同社はすでにGenki RoboticsやShizuku AIなどに投資しています。日本の投資先には、資金だけでなく、顧客候補や人材、パートナー企業とのネットワークも活用して成長を支える考えです。
5月の赤澤経済産業大臣との会談で、共同創業者のベン・ホロウィッツ氏は、東京を同社唯一の海外拠点とし、将来は米国で実施している起業家育成事業を日本でも行う意向を示しました。赤澤大臣は拠点開設を歓迎し、日本のスタートアップへの投資・育成を通じたエコシステムの高度化と国際化への期待を伝えました。高市総理も同日、ホロウィッツ氏の表敬を受けています。
防衛とロボティクスを重点領域に
ホロウィッツ氏は、防衛分野では安価なドローンや自律型システムへの対処が課題となり、新しい企業に機会が生まれているとの見方を示しました。日本での投資対象として、ドローンや対ドローン技術、ロボティクス、サイバー防衛などを挙げています。
防衛技術ジャーナルの解説によると、ドローンへの対処には、電波妨害、ネットによる捕獲、レーザー、高出力マイクロ波、物理的な攻撃など複数の方法があります。対処では、センサーで検出・識別した後、人間の担当者が手段を決める手順が示されています。
防衛技術ジャーナルの解説では、レーザーは機体を破壊する一方、高出力マイクロ波は電子機器に損傷を与える方式とされています。米空軍研究所の試作品THORは、複数のドローンへの対処を想定し、数百機のドローン群を使った試験で有効性を実証したと同解説は述べています。これらの方式や費用は一律ではなく、a16zが挙げた「低価格の脅威にどう備えるか」という課題には、複数の技術を組み合わせる選択肢があります。
日本の技術基盤との連携
ロボティクスについてホロウィッツ氏は、日本にはモーターや部品などの供給網と技術基盤があると述べました。米国企業が持つ自律型システムの制御ソフトウェアと、日本のハードウェアや供給網を組み合わせることに意義があるとの考えです。
吉田仁志・日本代表は、日本の起業家育成や海外展開支援に取り組む方針を説明しました。a16zの投資先や顧客企業とのつながりを生かし、事業の成長を支えるネットワークを提供するとも述べています。
経済団体連合会(経団連)は5月、防衛生産・技術基盤の強化に関する提言を公表しました。スタートアップや大学との協業、複数年度にわたる安定した調達、研究開発から量産・維持までの時間軸の明確化を政府に求めています。a16zの日本展開は、こうした産業界が求める技術開発・事業化の環境と民間投資を結びつける動きの一つです。
スタートアップ参入をめぐる政策と課題
自民党の防衛産業振興議員連盟は10月7日、安全保障関連3文書の改定に向けた提言案を大筋で了承しました。新たな防衛力整備計画の期間に、スタートアップを対象とする防衛装備品の調達制度へ約5,000億円を充てるよう提起しています。これは議連の提言案であり、決定済みの政府予算ではありません。
地経学研究所の塩野誠氏は、防衛装備庁が示したスタートアップ活用策として、複数企業と同時に契約して早期装備化を図る「ファストパス調達」、調達の見通しを高める施策、大手企業とのマッチング、民間資金を呼び込む施策を紹介しています。
同氏は、防衛市場では政府が主要な顧客となり、実証から購入までに時間がかかりやすいと指摘します。防衛専業では政府契約への依存が大きくなるため、民間市場にも展開できるデュアルユース(民生・防衛の両方で使う技術)が、スタートアップの事業モデルや資金調達で重要になると論じています。a16zが掲げるAIやロボティクスへの投資も、民間で培われた技術と防衛分野の需要をどう結びつけるかが焦点です。









