オーストラリアの研究チームが、睡眠や気分の季節変動などを特徴とする「サーカディアンうつ」といううつ病のサブタイプを提案しました。11,380人を調べた結果、2,604人がこの分類に当てはまり、重いうつ病を繰り返す人などの約4分の1にみられる可能性があるとしています。ただし、診断基準として確立した分類ではなく、臨床で治療を選ぶ根拠にするには追加の研究が必要です。
6項目のうち3項目以上で分類
研究チームは、オーストラリアで実施された遺伝・うつ病研究の参加者11,380人を対象に、睡眠や気分に関する自己申告を分析しました。季節による気分の変化、遅い睡眠時刻、仕事日と休日の睡眠時刻のずれ、夜型の傾向、過眠、起床時の疲労という6項目のうち、3項目以上に当てはまる人をサーカディアン群に分類しました。
該当した2,604人は、残る参加者より若い時期にうつ病を発症していました。発症年齢の平均はサーカディアン群で約19歳、ほかの参加者では約23歳でした。また、サーカディアン群では心理的苦痛や自殺念慮、身体症状の申告が多く、うつ状態の時期に体重が増えた人も多くみられました。
研究チームは、唾液試料の遺伝情報から複数の遺伝的変異の影響を合算する「ポリジェニックリスクスコア」も調べました。サーカディアン群では、うつ病、不安症、ADHD、双極性障害に加え、体重、インスリン抵抗性、炎症、不眠、夜型傾向に関連する遺伝的リスクが高い傾向でした。この結果は、提案された分類が睡眠の訴えだけで構成されていないことを示しています。
季節性の分類とは基準が異なる
季節性情動障害は独立した診断名というより、うつ病や双極性障害が季節に応じて変化することを示す分類上の指定です。診断では、少なくとも2年間にわたる季節性の変化が基準になります。秋冬にうつ症状が始まったり悪化したりし、春夏に軽快するパターンがよくみられます。
一方、今回提案されたサーカディアン群は、気分の季節変化だけでなく、睡眠時刻や仕事日と休日のずれ、夜型傾向、過眠、起床時の疲労を合わせて判定します。季節性の変化は6項目の一つですが、それだけでサーカディアン群に分類されるわけではありません。季節性情動障害では、光療法や抗うつ薬が初期治療の選択肢とされています。
体内時計と気分を結ぶ仕組み
体内時計は約24時間周期のリズムを作る仕組みで、昼夜の光の変化が時刻を合わせる主要な手掛かりになります。脳の視交叉上核は網膜から光の情報を受け取り、脳や身体の各所にある時計の同期を調整します。光や睡眠・覚醒の周期が外部の昼夜とずれると、気分の変化を含む健康上の影響が生じる可能性が研究されています。
体内時計は脳だけでなく、ほぼすべての細胞にも備わっており、活動と休息に合わせてエネルギー利用や細胞の修復などのタイミングを調整します。中心となる時計の働きが乱れたり、体内の複数の時計が互いに同期しなくなったりすることが、気分障害に関わる仕組みとして検討されています。光や睡眠・覚醒の周期を調整する治療が、一部の気分障害で役立つことも報告されています。
治療への応用には検証が必要
今回の研究では、サーカディアン群の人は一般的な抗うつ薬であるSSRIやSNRIの効果を得にくかったと自己申告し、眠気、吐き気、不安、体重増加などの副作用も多く報告しました。研究チームは、メラトニンや明るい光を使った療法、睡眠時刻を整える方法を候補に挙げていますが、治療効果を確かめる臨床試験は今後の課題です。
別の臨床試験では、季節性ではない単極性うつ病があり、夜型傾向を持つ93人を対象に、明るい白色光と暗い赤色光を比較しました。両群とも光を当てる時刻を段階的に早め、治療は5週間行われました。寛解率は白色光群で67.4%、赤色光群で46.7%で、白色光群では寛解までの時間も短かったと報告されています。
この試験は、今回のサーカディアン群の基準で選ばれた人を対象にしたものではありません。専門家は、研究参加者の睡眠リズムは自己申告で、直接的な体内時計の測定と一致する度合いは限定的だと指摘しています。また、調査対象はオーストラリアの一つの集団で、遺伝解析は欧州系の祖先を持つ参加者に限られていました。











