【公式】エクソソームによる変形性膝関節症に対する本邦初となる特定臨床研究 開始のお知らせ|湘南鎌倉総合病院
出典: skgh.jp

6週間の試験で痛みと握力を比較

膝の変形性関節症がある成人117人を対象にした臨床試験で、プレバイオティクスの食物繊維「イヌリン」を毎日摂取した群は、膝の痛みが低下し、握力が改善しました。痛みへの敏感さも低下し、イヌリン単独群の脱落率は3.6%でした。デジタル支援の運動療法単独群では21%が脱落しました。

INSPIRE試験は6週間の無作為化比較試験で、参加者をイヌリン単独、デジタル支援による理学療法の運動、両方の併用、プラセボの4群に分けました。イヌリンと運動療法はそれぞれ膝の痛みを軽減しました。

握力の改善と痛みへの敏感さの低下は、イヌリン群で確認され、運動療法単独群では見られませんでした。痛みへの敏感さは、痛みを伴う刺激に神経系がどの程度強く反応するかを表します。

腸内細菌とGLP-1の変化

イヌリンはチコリの根やキクイモなどに含まれる食物繊維です。小腸で消化されず大腸へ届き、腸内細菌の栄養源になります。生きた微生物を補うプロバイオティクスとは異なり、イヌリンは有益な細菌を育てるプレバイオティクスに分類されます。

腸内細菌がイヌリンを発酵させると、短鎖脂肪酸が生じます。その一つである酪酸は腸の内壁を支え、炎症や痛みに関わる経路に影響する可能性があります。試験では、イヌリン摂取群で酪酸の値が上昇しました。

摂取群では、腸から分泌されるホルモンGLP-1の値も上昇しました。GLP-1は血糖値や食欲の調節に関わり、痛みの調節や筋肉の健康との関連も研究されています。値が高い参加者ほど握力が強い傾向がありましたが、この関連だけでGLP-1が握力を改善したとは言えません。

膝の変形性関節症と年齢別の有病率

膝の変形性関節症は、膝関節の軟骨などが徐々に損なわれ、痛みやこわばり、腫れ、歩行の難しさにつながる疾患です。世界の有病率を調べたメタ分析では、人口ベースの研究88件、計1,008万1,952人のデータが対象になりました。

同分析で、膝の変形性関節症の有病率は15歳以上で16.0%、40歳以上で22.9%と推定されました。40歳以上では、2020年時点で世界に約6億5,410万人が該当すると推計されています。

有病率と発症率は国によって大きく異なり、年齢が上がるほど高くなる傾向が示されました。女性の有病率は男性の1.69倍で、発症率は1.39倍と推定されています。

追加治療としての可能性と今後の検証

腸内環境への働きかけは、膝の痛みだけでなく、握力や痛みの感じ方とも関連する可能性があります。研究者は、GLP-1と握力の関係を含む仕組みの解明を今後の課題に挙げています。

一方、試験の参加者は117人で、期間は6週間でした。効果が長期に続くか、どの患者に効果が出やすいか、変化を生む仕組みは何かを明らかにするには、より大規模で長期の研究が必要です。

研究結果は、食物繊維のサプリメントが運動や既存の治療に取って代わることを示すものではありません。試験で調べられたのはイヌリン摂取による変化で、治療全体の代替ではなく、症状管理を補う可能性として位置づけられています。