煙が国境を越える火災
インドネシアの一部では数週間にわたり森林火災が続き、煙は国内だけでなく、マレーシア、シンガポール、フィリピンにも広がっています。火災の一部は、地表の炎が見えにくく、地下にも燃え広がる泥炭地で起きています。
泥炭は、湿地に長期間蓄積した植物由来の有機物を含む土壌です。NASAによると、インドネシアには世界の熱帯泥炭地の約36%があり、乾燥すると地表と地下の両方で火災が起こり得ます。
泥炭火災は低温でくすぶりながら燃えるため、一般的な森林火災のような大きな炎が目印になりません。煙が地表に広がっても、発生地点が火元から離れている場合があり、煙の位置だけでは消火場所を特定しにくいとされます。
泥炭の中で燃焼が続く理由
泥炭は水分を保っている間は燃えにくい一方、乾燥すると可燃性が高まります。NASAは、地表火災より地下の火災のほうが深刻になりやすく、雨が戻るまで燃え続ける場合があると説明しています。
地下に広がる泥炭層は場所によって厚く、燃焼箇所を見つけて水を届ける作業を難しくします。Scientific Americanが紹介した説明では、泥炭火災は地中をゆっくり広がり、発見、位置の特定、消火のいずれも困難です。
乾ききった泥炭は水をはじきやすく、散水しても水が地下の火元まで届かないことがあります。消火には大量の水が必要ですが、森林の奥深くまで運ぶのも難しく、規模が大きくなった火災では雨が主要な水源になり得るとされています。
乾燥と土地利用が重なる
2026年の火災についてNASAは、インドネシアで広域の干ばつが起き、8月初めには国内の約90%で雨がほとんど降らなかったとしています。通常は湿潤な泥炭地でも、乾燥が進むと地下の堆積物に火が回りやすくなります。
NASAが紹介した研究者の説明によると、1990年代に大規模な稲作農場を設けるために水路が建設され、泥炭湿地の排水が進んだことが、現在の地域の燃えやすさに関係しています。その後、水路の一部をせき止め、湿地を回復させる取り組みも行われています。
Pantau Gambutの2023年報告書は、大規模な単一作物の農園開発で泥炭地の排水が進み、土地を開く費用を抑えるための火入れも行われてきたと記しています。同報告書が2015~2019年の火災跡を分析したところ、焼失地の少なくとも半分は泥炭地で、焼失面積の約30%はパーム油や木材生産の事業権区域内でした。
米国森林局の研究論文は、インドネシアの泥炭火災の着火源が、パーム油や木材生産、小規模農業に伴う土地開墾と広く結び付けられていると整理しています。一方、経済的な理由を大きく括るだけでは、土地管理の政策や排出削減策を作るには不十分だとも指摘しています。同論文は、火災を減らすには土地の状態と現場の活動を詳しく把握する必要があると論じています。
観測と消火の課題
インドネシア政府は、NASAと米海洋大気庁の衛星観測を使い、活動中の火災をほぼリアルタイムで追跡しています。ただし、厚い煙や雲、森林の下層、地下の泥炭に隠れた火災は、衛星で捉えにくい場合があります。
NASAは、火災が特に激しいときには、衛星が記録する火災検知数がかえって減ることもあると説明しています。そのため、検知数だけでは地下で続く火災の広がりを把握しきれない場合があります。
現地では煙にさらされる人がいるほか、一部の学校が遠隔授業に切り替え、国立公園9カ所が閉鎖され、濃い煙による航空便の遅延も起きています。NASAの研究者らは、LandsatやSentinel-2の短波赤外線観測を活用し、既存の衛星で捉えにくい森林下層の火災を検出する手法を開発しています。











